リレーコラムについて

コピーってさー

渋谷三紀

私の本好きは父譲りだ。

ある日、本の重みで父の部屋の床が沈んで、

慌てて軽トラックを借りて

図書館に運んだことを覚えている。

 

働き方改革とかイクメンなんて

言葉が生まれるはるか昔。

私が子供の頃の父は

私が起きる前に仕事に行き、

寝た後に帰って来るような生活で。

寂しくなると、私は父の本棚にある本を手に取った。

同じ文章を追っていると、

同じ景色を歩いてるみたいな気がした。

 

ある時から、夜の間に

父が好きな本を机に置いてくれるようになった。

翌朝見つけて開くと

感想を書いた父のメモが挟んであって、

読み終わると私も挟んで返す。

本の交換日記の言葉が、

距離とか時間を埋めてくれるような気がした。

何より楽しくて。

それは私が実家を出るまで不定期にずっと続いた。

 

多分あれが、言葉の力を意識した原体験だ。

 

コピーの時代じゃないよ、とか言われたりもする。

そうなの?

私はやっぱりコピーが好きだし、

コピーに出会う前から言葉が大好きだった。

厄介なやつだけど、てこずってばかりだけど、

嫌いにはなれない。

だから取っ組み合ってこれからも、

私は書いていきたい。

ま、なるようになるさ。

 

 

 

一週間おつきあいいただいた皆さま、

ありがとうございました。

来週は、電通デジタルの米村大介くんです。

今年、審査委員長賞を受賞した米村くんのコラム、

私も楽しみです。

では、またどこかで。

 

渋谷三紀

NO
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