リレーコラムについて

ホンモノの証。

鎌田健作

一時期、我が家の子たちは暇さえあれば、Netflixで「クレヨンしんちゃん」を観ていた。

とくに映画版。おそらくすべてコンプリートしていて、同じタイトルを何周もしていた。

 

あまりにも毎日観ているから、否が応でも内容が入ってくる。

とくに覚えているのは、映画「クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!」だ。

なんだか賑やかそうな楽しげなタイトルだが、物語はわりと恐ろしめの内容だった。

 

サンバを踊る謎の集団「そっくり人間」が世界を征服しようと、なぜか春日部に現れて

春日部市の人々とすり替わる、というもの。母ちゃんも、父ちゃんも、幼稚園の先生たちも、

いつものように一緒に過ごしていたのに、いつの間にかニセモノにすり替わっていた…

というものだ。

 

ある日、息子と風呂に入っている時、ちょっと企んだ顔つきで

「パパも、じつは、ニセモノかも…よ…」と息子に言うと、

「いやいや、んなわけ……」と言いながらも、

一瞬「えっ…」という表情になったのを見逃さなかった。

 

たしかその時に教えた気がする。

 

俺の右手の手のひらには、ずいぶん前から親指の付け根あたりに直径0.5ミリほどのタコがある。

「なんかここ、ボコってなってるよ」と息子もその存在を知っていた。

もしもパパが知らぬ間にニセモノにすり替わっていたら、その時は、手を繋いだら分かる。

ニセモノだったら、きっとこのタコはない。指で触れてタコがなかったらニセモノだと思え。と。

 

それからというもの息子は、手を繋いでいると、時々人差し指を小さく動かしてタコを確認している。

これまで何度か「アレ?ない!タコがない!!」と言って焦った後に

「あ、これ左手だった」となったこともある。

 

今もそのためにやっているかどうかは分からないが、手を繋いでいると、時々指でタコを撫で撫でしている。

 

このあいだ、いつものように手を繋いで歩いていると、同じサッカーチームの友だちを見つけて、

見つけた瞬間にパッと手を離したことがあった。そろそろきたかもしれない。

息子がタコを撫で撫でしなくなるのも、もう時間の問題だ。

 

 

子どもの頃は、いろんなことを信じていた。

 

いつか、両手から「かめはめ波」が出ると信じていたし、

いつか、空も飛べるはずと思っていたし、

いつか、瞬間移動だってできるはずと強く信じていた。(ぜんぶドラゴンボールだな)

息子も、いつか自分もサッカー日本代表になる。そう信じて疑っていない。

 

 

大人になった今、

強く信じているものって何だろう。

 

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