リレーコラムについて

屁の話は2回まで

古川雅之

「近畿の無駄口」こと、電通関西の古川雅之です。
三日目、よろしくお願いします。

児島令子先輩からいただいた大事なバトンですから……(フリ)

「コラムに書く屁の話は2回まで」
と、厳格な両親にきつく言われて育ってきた夢を見ました。
ふつうなら、3回まではOKでしょう。と思いがちなところ、
2回までという厳しさが、育ちのよさといえば言い過ぎでしょうか。

さて、書くことも尽きたので、僕が見た夢の話をします。
あまり知らない人が見た夢の話ほど、興味の湧かないものはないでしょう。
でも、仕方ありません。
屁の話はもうできないのですから。
こうやって自分を律して生きてきたのです。

その夢の設定は「現在」のようでした。
結婚していて、現在の妻と娘がいます。
その日は珍しく、夕方まだ明るいうちに帰路につきます。
住んでいる家は・・・なぜか僕が学生時代に住んでいたワンルームマンション。
夢ではこういう時系列の混乱がよくありますよね。
でも自然と受け入れていて、話は進みます。
僕も「なぜか」とは思わずに家に向かっています。
エレベーターを4階で降りて、ドアが並ぶ細い廊下の突き当たり。
と、ドアが空いています。全開です。
「ん?」と思い、少し静かに歩いて行きます。
そっと中を伺うと・・・狭い玄関に履き古された大きなスニーカー。
カカトが踏み潰されています。
「電気か何かの工事の人かな?」と思ったとき、
背後に人の気配を感じます。
振り返ると、先ほど降りたエレベーターの近くから壁に隠れるようにして
強面の男がこちらをのぞいていて、目が会いました。
男は「ちっ」と舌打ちをします。
「え?? どういうことだ?」イヤな予感。頭は混乱します。
すると何かを察したのか、家の中からこれまた強面の男が玄関を振り返り・・・
これまた目が会っちゃったのです。

強盗だ………。

その瞬間、頭の中をいろんなことが駆け巡ります。
(家族は無事なのか)
(男は2人いる)
(どうする)
(ほかにも仲間がいるかもしれない)
(ナイフらしきものが見えた)
(助けを呼ばないと)
(こういう時って恐怖で、いざ大きな声が出ないって聞いたことある)
(「泥棒!」とか「助けて!」よりも、「火事だ!」と叫んだ方が
人が出てきてくれると聞いたことがある)
(声、出るかな)
(出さないと)
(どうする!)
家の中の男が、玄関に向かってもう一歩出そうとする間(スローモーション)に
パニック状態で脳みそがフル回転して出した答え。

大きく息を吸い込んで、腹の底から

 

「火ぁ事やーーーーっ!」

 

小ぶりなマンションの、全室の窓ガラスがビリビリ震えるくらいの大声。
その甲斐あって消えました。映像ごと。

よく覚えてないんですが、
ああ夢だったのか、と安心したような記憶があります。
いま自分が実際に声を発したのか(その声で夢から覚めたのか)、
夢の中で発した大声なのかは分からず、そのまままた眠りについたようでした。
それにしても、よかった・・・。
と深い眠りに落ちそうになった時、

 

「おいっ」

パチ パチパチ と家中の電気がつきます。

眩しい。。。何事かと目を開けると、えっ?
そこには仁王立ちで僕を見下ろしている妻と娘。

「・・・その寝言は、アカンわ」

時間は朝4時前。
お隣はもちろん、お向かいの家にまで響かんばかりの
渾身の「火事や!」だったとのこと。

声、出たんだ。

それから朝まで、消防車が来ないか心配しながらぐっすり眠りました。
幸い消防車は来ませんでした。

うちの近所、ご老人が多いので
もっと大きな声で叫ばないとダメね。

では、また明日。

 

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