思ってたんと違う①
「キミ、飛行機好き?」
ADK営業局に配属された新入社員の僕の心は踊った。
同期が様々な部署に配属が決まる中で、僕だけなかなか配属が決まらず、
ヤキモキしているときに、ある営業部長に呼び出されて、言われた第一声。
(航空会社担当の営業かな?いいね、悪くない)
「今、営業チームはみんな九州にいるから早速行こうか」
と言われ、僕はJAL便に乗って、一路、九州へ。
降り立ったのは、名水100選にも選ばれる自然豊かな大地。
飛行場の近くにある、大きな工場の庭でパーティをやっているので、会長・社長に挨拶しようと。
営業局長と営業部長と一緒に、慣れない手付きとセリフで名刺交換をする新人の僕。
そう。
担当になったのは、航空会社ではなく、スキンケアブランドなどを展開する九州の会社。
その創業者の会長と社長に、新人紹介の挨拶をしに行ったわけだ。
挨拶は瞬殺で終わり、我々3人はタクシーに乗って、一旦、今夜泊まるホテルへ。
「石山くんのプチ歓迎会も兼ねて、今夜は寿司でも行きますか?」と営業部長。
と、その時、営業局長の携帯が鳴る。
「はい、お世話になっております。はい、はい。ええ。では、すぐに伺います」
携帯を切ると、我々を乗せたタクシーは颯爽とUターンし、街のある方に方向転換。
待っていたのは、自分の母親と同じくらいの年齢であろう女性たちに囲まれた、
高そうなウイスキーをロックで嗜む、クライアントさんの役員1名が鎮座するスナック。
そこにお呼ばれした、営業局長、営業部長、新人営業の3名。
とても有難いご指南、並びに、ご指導を賜る。
1時間もすると、営業局長が言った。
「すいません、体調が悪いので、今夜はこれで。あとは2人に任せます」
2時間もすると、営業部長が言った。
「すいません、明日プレゼンがありますので、今夜はこれで。あとは石山に任せます」
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい
おいっ!・・・おいいいっ!!!
残ってるのは、完全に出来上がってらっしゃる役員さま1名。
対峙してるのは、本日クライアントデビューの新人営業1名。
あとは、お世辞にも綺麗とはいえないお姉様たち数名とママ1名。
成立してないって。アカウント失っちゃうって。夢なら覚めてくれ。
ていうか、ひどくない?
なんで上司2名が新人置いて帰れるかな。
頭おかしいのかな?え?
広告代理店てそういうとこ??え?
社会人になるってこういうこと?え?
グルグル考えすぎて、お酒も回りはじめて、
そこからは記憶がやや朧げだが、名刺の出し方をご指導賜り、
水とウイスキーの割合をご指導賜り、マドラーでの混ぜ方もご指導賜り、
とても楽しいひと時を過ごした。
朝方、はじめてチェックインしたホテルの部屋で、
僕は自分の頬に冷たいものがつたうのをふと感じた。
あれ?
思ってたんと違う。
つづく。
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はい、初日はこんな感じでスタートです。
昨年、Tinder「どこかにいい人いないかなーって、一生言ってな。」で
TCC新人賞を受賞した石山です。
同じくTCC同期の水野さんよりバトンを頂戴しまして、
今週、担当させていただきます。
これから1週間、お付き合いくださいませ。
よろしくお願いします。