茄子の煮物はタイムマシン
たまに一人で行く、串揚げの美味しい素敵な居酒屋さん。チェーンとちがいます。
仕事帰り、上品なグレーヘアーのお母さんが「お疲れ様」と迎えてくれます。
そのカウンターの隅っこで、
うずらの串揚げとレモンサワーを飲むのが至福のときです。
このお店を教えてくれたのはかつての上司Yさんです。
Yさんはすごいコピーライターですが、かなり個性的な方でもありました。
どんなに個性的かは本題からそれるので割愛します。
Yさんは、たくさんお酒を飲むけれど、つまみはほとんど食べないタイプの人です。
「おれはなんでもいいよ。長谷川の好きなものたのめよ」と言います。
なんでもいいと言いつつ、Yさんは串揚げは絶対食べないとわかっているので、
悩んだすえに茄子の煮物とポテサラ、お酒に合いそうな物を頼みました。
でも、お皿が出てくると「おれはいらない」と言います。
なんでもいいって言ったんじゃん、めんどくさい。
茄子の煮物、私が全部食べました。お説教を聴きながら。
(たぶんいい話ですが)お説教の中身は覚えていないのに、
千切りの鰹節がふわっと乗った茄子の煮物だけは忘れられません。
カウンターで、今日も仕事がんばったな、至福の時を味わってるのに、
たまに想定外に、全然思い出したくないのに、
モゴモゴと語るYさんのお説教を聴きながしつつ
私が箸をさす茄子の煮物が現れます。
忘れられない記憶はタイムマシンなんだな。
柄にもなくロマンチックなことを思っていると
レモンサワーのおかわりが来て、私は現代に引き戻されました。
ちなみに、今、このお店のメニューに茄子の煮物はありません。
美味しかったんだけどなあ。。。
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