読むとみるみるコピーが書けなくなるコラム②と、出版予告
いきなりですが、12月下旬に「REICOエンタープライズ」という新会社を設立することになりまして、スタッフ募集……おっと、違った。私のコピーの本が出版されることになりました。詳しくはこのコラムの最後で。
読むとコピーが書けなくなる怖いコラムの2回目です。
怖がりの方はず〜っと下にいって、出版予告だけ読んで帰ってね。さて今回のテーマは、これです。ジャーン!
人生問題。
きましたよ、きましたよ。2回目にして早くも大ネタきました!泣く子も黙る、知る人ぞ知る、人生問題。TCC界隈に、都市伝説のように囁かれつづける人生問題です。どういう問題か、ご説明しましょう。
ひとことで言うと、「コピーライターは、コピーに人生って言葉を使いすぎちゃう?」ってこと。どうです?スネに傷を持つ人いませんか?私は傷だらけです。よって、これは私が言ったことではありません。いや、誰も言っていません。じゃあ読み人知らず?でもなくて…
ことの発端は、もう何年も前のTCC審査会。あのコピーのうまい高崎卓馬さんがもっと勉強しようと、レジェンド仲畑貴志さんの後ろについて、仲畑さんオーラを感じつつ審査会場を回っていたときのこと。仲畑さんが「人生」という言葉の入ったコピーを見るたびに、「あ、また使ってる…」と、ご機嫌よろしくない表情で呟かれたそうです。
高崎さんは、大変なものを見てしまった!と思われたのでしょう。たぶん。
早速このことを周りのコピーライターに伝えなくてはと。するとその界隈では、筒井康隆氏の小説、「残像に口紅を」のごとく、原稿用紙から人生という言葉が消えていったとか、いってないとか。そしてその噂は、遠く500キロ離れた大阪の私のところにまで伝わってきたのでした。
私の直接の見聞じゃないので、私には仲畑さんの真意はわかりません。でも、なんとなくはわかります。
そう、わかるってことは、自分も心の中でそう思ってたから。「あ、また人生って書いちゃった。うーん、他に言い方ないかなあ。うーん…」と。私だっていつもいつも人生って書きたいわけじゃないの。でも結局ひとことで言うと人生ってことだよねってなる。
だけどここで考えてみよう。すべてのコピーライターがことあるごとに人生を乱用すると、どうなるだろうか。
世の中の広告に人生の文字や音声があふれ、人生がインフレーションを起こし、もはや人々は、人生という言葉に誰も何も感じなくなる日がくるのではないか?
それはまずい。悲しい。切ない。なにより私たちの大事な言葉の武器がひとつ減る。だから、本当に使うべきときだけ使おう。みんなで言葉を守ろう。人生って、すてきな言葉なんだから。
とりあえず人生って入れといたらコピーっぽくなるだろう。みたいなのはダメよ。ならないし。
「うわあ、読まなきゃきゃよかった!もう書けないやん」ってなった若いみなさん。
いえいえ、人生を使うに値するコピーを考えればいいのです。人生を使うときは、厳しく自分でスクリーニングする。それでも使いたいと思えるコピーかどうかを。仲畑さんの目を見て、胸張って見せられるコピーかどうかを。
私も今年使っちゃいましたよ。は、はい。後悔はしてません。(キリッ!)
それになにより、2022年のTCCグランプリに輝いたのはこれですよ!「人生には、飲食店がいる。」そういうこと。
ちなみに仲畑さんは、人生はあまり使わないけど、「人間」」はよく使われます。
「人間は、全員疲れているのだ」と仮定する。/なんだ、ぜんぶ人間のせいじゃないか。/トリスの味は人間味。/害虫と決めたのは人間。益虫と決めたのも人間。勝手なんだから。/などなど名コピー多しですね。
◎ここから出版予告です。
パイ インターナショナルから12月23日発売予定です。よろしくお願いします。タイトルが、「私、誰の人生もうらやましくないわ。」で、サブタイトルが「児島令子コピー集め」です。
あああ!こ、このタイトル…………「人生」入ってる~。
今日のコラムの流れで、これはまずいか?いや、まずくはないはずだ。
「私、誰の人生もうらやましくないわ。」は、ナショナルのシングル向け家電のコピーでした。当時なぜ私はこのコピーを書いたのか?どこでどんな風に生まれたか?その誕生の背景を綴ったコラムも書いてます。
私はコピーはほぼ仕事場で、紙かパソコンの前で考えて浮かぶのですが、これは例外でした。ではどこで生まれたのでしょうか。よかったら、つづきは本で。
1996年に仲畑さんからTCC審査委員長賞をいただた、「キスというものを、ここしばらくしてない。」も載ってます。尼崎の結婚式場のコピーで、年鑑には掲載2本だけでしたが、この本ではシリーズ4本すべてフルコピーで紹介。全部暗いです(笑)。なぜ結婚式場で、こんな暗いコピーを書いたのか?その誕生背景もコラムで書きました。
ではまたあした、お会いしましょう。あした何を書くかは、いまはまだ頭の中が真っ白です。自分が怖いです。
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