近所の話-2「イエローエイプクラフト」
1人でふらっと入れる飲み屋さんが家の近所に2つある。
そのうちの1つがイエローエイプクラフト(以下イエローエイプ)。
イエローエイプは大阪の北浜の中心くらいにあるビアバーで、
いつでも20種類近くのクラフトビールを呑むことができる。
1階は全席カウンター、明るい照明、音楽は小さめ、お店の人の声も小さい。
お客さんも静か。だからひとりで飛び込みやすい。
と言いながら、最初はとにかく緊張した。
何日もただお店の前を通り過ぎて、ある日、意を決して行ってみた。
ひとり呑みを覚えたのはこのお店がきっかけだ。
ちなみに私は30歳を過ぎるまでビールが好きではなかった。
しかしH先輩と仕事をした時に、クラフトビールをしこたまご馳走になって覚醒。
H先輩は本当に美味しそうにビールを呑む。ヒゲに泡をつけながら。
その多幸感に私はやられたのだと思う。
話を戻してイエローエイプ。
イエローエイプは私にとって、残業中に「もう嫌だ。疲れた。逃げたい。」
となった時に「あと1時間がんばって、おいしいビールを呑もう!」
という人参的存在。
会社からお店まで徒歩20分、そこから家まで10分。
もう目の前に家があるのだから帰ればいいのにと思うけれど
そういうわけにもいかない。
週に1回くらいのペースで通い出してもう4年はたった。
でも決してクラフトビールに明るくない。
味で言えば、酸っぱいのと黒いのが好きだと知った程度。
いつもお店の人に相談しながら、最後は直感に任せる。
この今夜の1杯を選ぶ瞬間が楽しい。
ケーキ屋さんでケーキを選ぶあの興奮と似ている。
平日は、小さい方のコップ2杯(たまに3杯)。20種類分の2杯。
どれを選んでも正解で、でも他のお客さんが呑んでいるものも気になる。
そんな真っ青な色のビールあるの?
すごい美味しそうに呑んでるそれは何ですか?と思いながら
悩みすぎないうちに決めてしまう。
大体、1杯目はフルーツ系(夏はスイカのビールとかもある)。
一緒にオリーブを食べる。
2杯目は黒いのにして(プリンのカラメルみたいな味がする気がする)
サラダを食べる。酸っぱいサラダのドレッシングと苦甘い黒いビールは
よく合うと思う。サラダはシェフの気まぐれで、サーモンの時もあれば、
生ハムの時もある。アボカドが混じっていると嬉しく
柿とかいちごが入っていると大当たり。平日、生野菜を大量に食べるのも
この時だけになることが多い。お店に来るのは大体22時過ぎ。
45分くらい滞在して、23時には家にいる。
夕飯も食べていないから、お腹はペコペコを通り過ぎてヘコヘコ
まっすぐ帰って缶ビールと冷奴の日もあるけれど
イエローエイプに立ち寄って帰ったら
今日はいいことがあったなぁと寝る前にしみじみできる。
最近、イエローエイプはビールのテイクアウトを始めた。
家から水筒を持って行くと量り売りをしてくれる。
台湾の酸っぱいの美味しかった。もち米の甘いのも良かった。
お店で呑んだらもっと美味しいのは絶対だ。
ちなみにビールを運ぶこの水筒は、冒頭のH先輩がCDの仕事で
海外について行った時に、何の気無しに自分への土産で買ったもの。
何年も眠っていたのを叩き起こした。
H先輩は私とおいしいビールを繋いでくれる神様かもしれない。
ビールの神様、そろそろ夏になりそうなので
どうか気兼ねなく乾杯ができるようにひとつお願いします。
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