リレーコラムについて

③岩崎俊一さんと梅澤俊敬さんのこと

鈴木勝

TCCの新人賞をいただく少し前、わたしがどんなコピーライターだったかというと、

とにかく生意気でした。感情的で才気走って勘違いしている、よくいる痛い若者です。

でも、それくらい自分の主張がないとコピーも尖らないという永遠のテーマ、ありますよね。

技術があれば違ってくるかもしれませんが、当時のわたしには到底無理な話です。

しかも、普通に勘違いしているだけでなく、親のトラブルや人生の恐怖のようなものから

逃れたくて、必死で、余裕がないものですから、それはもう酷いありさまでした。

いまでは、せめて、自分が優しくしていただいたぶん、

誰かに優しくしてあげたいと思っています。

 

そんな若かった頃のある日、岩崎俊一さんがリクルートの勉強会の講師として

お話をしてくださり、その後の親睦会にまでお付き合いしてくれました。

そこで岩崎さんが「コピーライターは嘘を上手につくのが仕事である」という趣旨のことを

おっしゃったのですが、わたしはあろうことか「俺は嘘はつかない(!)」と言い張って、

岩崎さんにけちょんけちょんにやりこめられました。

 

そのときの表情や仕草、話されていたこと、ずっと覚えています。

いまでは、とても愛のあるふるまいと叱り方に感謝していますし、

おっしゃっていたことの深さに唸るばかりなのですが、

当時の私は不貞腐れて酔い潰れて、介抱して連れ帰ってくれた人のお宅で盛大に吐いてしまったのでした。

それが、当時新婚だった、同い年の梅澤さんのマンションでした。

梅澤さんが言うには、私は仰向けで寝ていたのに、突然天井に向かって、

ぴゅーと勢いよく吹き出したそうです…

 

岩崎さん、梅澤さん、奥様、あの日は本当にすみませんでした。

そして、ありがとうございました。

人として、コピーライターとして、素敵なお二人が亡くなられてしまったこと、

悲しくて、切なくて、悔しくて、残念でなりません。

お二人の訃報に接したとき、動揺したこころがしばらくして落ち着くと、

なぜだか、もっと真剣にコピーに向き合おうという気持ちが湧いてきました。

人が永遠に生き続けるという言葉の意味が、少しわかった気がします。

 

 

・・・

ご存じの方もいますが、わたしは調整のきかない仕事をしている期間が長く、

TCCのパーティーなどに行く機会もすっかりなくなってしまいました。

そうでなくても、もともと出不精で、リモートワーク大好きなわたしが言うのもなんですが、

若いみなさん、人との出会いを大切にしてくださいね。

(④母が書いたノートのこと、につづきます)

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年月日
名前
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