「オリエン中に企画を終えろ」
「プレゼンより、オリエンが勝負」
それがA先輩の持論だった。
いわく、オリエン中に企画がほとんどできるらしい。
なんなら、オリエン中に
「じゃあこんな企画はどうですか?」
とその場でクライアントにプレゼンしていた。
「オリエン中に、最低3本は企画ができる」とA先輩。
オリエン中にまず、企画を完成させる。
そのことによって、オリエンの足りないところ、矛盾、議論したほうがいいところ、そういったことがその場で見えてくる。
そして、それはオリエンの場で解決するのがいちばん早い。
なんならその場で提案すれば、いちばんずれがない。
これが再プレを避けるコツだとA先輩はいった。
私といえば、ぼーっとオリエンを受けているだけだった。
それで、家に帰った後で
「あれ…よく考えると、さっきのあれ、どうやって成立させたらいいんだろう…」と、のたうち回るのだった。
オリエンの場ですぐ企画が思いつく頭の回転がなかったこともあるが、どちらかというと向き合い方の問題だったと思う。
自分の中で「オリエンは受けるもの」「プレゼンはするもの」といった固定観念があり、オリエンでクライアントと議論することがどれほど重要なことか、あまりわかっていなかった。
最近でこそ、プレゼン資料の精度よりもクライアントとスモールセッションを重ねることが大事、みたいな風潮があるが、A先輩はずっと前からそれをやっていたのだ。
私は未だに当意即妙にアイデアを出すことが苦手なのでセッション的に議論することができない。
「こういうのってどうですかねー」ができない。
ちゃんと前段をつくって相手を納得させてから進めるいわゆる「パワポ芸」的なプレゼンが好きなので、やっぱりある程度つくりこんだ資料でプレゼンしたい、と思ってしまうタイプだ。
でも、それだって独りよがりな企画なら、ただの時間の無駄なのだ。
A先輩の教えを胸に、なるべく恥をかこうと思っている。
そう思ってはや十数年たつが、やっぱりできていない。
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