リレーコラムについて

ありがとう、少年野球。③

鈴木良平

シロート監督も使いよう!

 

監督になる前、コーチという名で球拾いを手伝っていた頃
不思議に思っていたことが一つ。

ウチのチームは、バッティング練習の時
コーチか監督がピッチャーをするのだけど
バッティング練習だと体育館越えの大きいのを打つ子が
試合だとなかなか大きいのが打てないこと。

大人の方がコントロールがいいからなのか
子どもが投げると変な回転があって打ちにくいのか
そんなこと、ぼんやり考えてました。

で、いよいよ監督になって
コーチが足りない時は、僕もバッティング投手を勤めることに。

さて、ここでシロート監督ならでは、なのですが
僕は、投・捕・打・走の中でも、とりわけ投・捕が苦手。
投については、身体の使い方なのか、手首のスナップなのか
とにかく遠投もスピードもコントロールもダメ。

少年野球はバッテリー間が16メートルなんだけど
そこからだとストライクが入らなくて、練習にならないので
3歩から5歩前に出て投げることにした。

すると子どもたちが言うのだ。

「監督、ボールが上から来るから打ちにくいです。」

それもそうだ。
130cmそこらの子に向かって
大人が至近距離で上から投げ込んでくるのだから。

仕方がないので、3歩から5歩前の位置で
膝立ちで投げることにした。
これならほぼ水平にボールが来ることになる。

ピッチャー返しが来るとちょっと怖かったけど
僕もじきに慣れた。
子どもたちもじきに慣れた。

そんな練習を続け、大きいのを打つ子も出始めてきた時
6年生にピッチャーをやらせてみたら
例の、大人ピッチャーだと打てるのに
子どもピッチャーだと打てない問題が
だいぶ緩和されていた。

きっと大人ピッチャーで、球を飛ばす練習をしていると
知らないうちにスウィングがアッパー気味になって
子どもピッチャーの水平に来る球が
打ちにくかったのかも、と思いました。

僕の貧肩も、役に立つ場面もあるんだな、と
ちょっと嬉しい発見でした。
赤鼻のトナカイかよ。

今回の結論:
子どもの目の高さ、ってムズカシイけどだいじ。

 

 

後出しじゃんけんはダメよ!

 

どうしたらチームが強くなるか
早く強くなる練習方法とか、あるなら取り入れたいものだ、と
社内で少年野球のコーチ経験者を集めて
「jekiコーチ会」なる飲み会をしました。

その時、仕事でも少年野球でも大先輩の月野さんがこう言いました。
「良平くんさ、ぜったい言っちゃいけない言葉って何だと思う?
子どもがミスした時、『なにやってんだ』ってやつ。
子どもは子どもなりに、常に最善の判断をして動いてるんだよ。
そこを『なにやってんだ』って言われると
もう自分から動けなくなっちゃうんだよ」

目から鱗でした。

自分も会社で、月野さんはじめ先輩方から
『なにやってんだ』と言われて
動けなくなった経験、山盛りだったので(笑)。

僕の場合、子どもたちに『なにやってんだ』と言うほど
野球に自信もないので、ほとんど言ったことはないけど
たしかに、チーム内に『なにやってんだ』文化がないことはない。

じゃぁ『なにやってんだ』を言わない代わりに
何を言ったらいいんだろう。

やっぱりコピーライターなので「コトバ」を考えることにした。

思いついたのは二つ。
ひとつは、『なにやってんだ』の反対。『よくやった』。
よく居酒屋のトイレなんかに
「キレイに使ってくれてありがとう」と貼ってある
あの作戦だ。

これはカンタン。打てば『よくやった』、捕れば『よくやった』。
シロート監督でもバンバン発信可能。

で、意外なことに、『よくやった』を連発していたら
練習を見に来ているお母さんたちのウケがよくなった。

もちろんシロート監督で不安、は変わらないけど
自分の子どもが褒められれば、悪い気はしない
そんなことだろうと思う。

さて、もう一つは
『なにやってんだ』を未然に防ぐことなんだろうなと思いました。

たとえば、2アウトランナー1塁の場面。
バッターがレフトにフライを打った。
1塁ランナーの子は、2アウトだったのをすっかり忘れて
1塁に留まり、打球の捕球を待っている。で、レフトがポロリ。
そこで鬼監督が『なにやってんだ』。

『なにやってんだ』を言わないためには
2アウトランナー1塁の段階で
「おーい○○、フライ上がったらどうするんだ?」
「おーい○○、いまアウトカウント、いくつ?」

ベンチからランナーの子に
先回りして声をかけておけばいい。

逆に言うと、子どもからしたら
「ミスをしたあと『なにやってんだ』と怒鳴るくらいなら
先に言っといてよ、後出しじゃんけんじゃん」
くらいのことなのかもしれない。

未然に防ぐ作戦は、いろんな野球のセオリーを知らないと
先回りがムズカシイ部分もあるけど
だいたい彼らがやらかすパターンも決まっているので
少しずつバリエーションを増やすことができた。

そのうち
「おーい○○、フライ上がったらどうするんだ?」と声をかけると
ランナーの子も、「OK、OK、わかってるって!」みたいになってきた。

そこまできたら今度は「おーい○○、頼むぞー」と声をかけることにした。
彼らも、僕が野球上手くないことは、よく分かっているから
この「頼むぞー」が、かえって効いたみたい。
「しょーがねーなー、まぁ任せとけ」くらいの顔で肯く。

まぁ、そんな感じで、『なにやってんだ』は影を潜め
チームの雰囲気は、少しずつだけど、まとまってきた。
とはいえ、この時期、僕らのチームは、まだ1勝もできてない。
勝負の道はキビシイのだ。

今回の結論:
それでも小学生男子は、みんな前向きなのだ。

 

 

続きはまた明日。

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