おかえり GINZA
銀座で働くことになって既に10年という月日が経った。
移籍して(秋山晶さんも講談社から移籍、と記してあるので僕も真似をしてる)直に某大社長から入れ!と有無を言わさず銀座ロータリークラブという全く似合わない処に参加することになったのが奏功してか銀座で商売をしてる老舗の旦那衆たちとも顔見知りになり、なかには無二の親友とも言っていいほど気の合う青年も現れた。
こうして今はまっ昼間どこへ行くともなく街なかを散歩(銀ブラってやつだ)してると、まるでふるさとの町の商店街を闊歩してるように、あちこちから「よぉ!げんき!」と銀座っ子らしいプライド故に少しはにかんだ声が飛んでくる。
そんな日はやっとこの手強い街の住人として片隅に居場所ができたかも、と、そしてこんな未来が僕を待っていたとは、全く想像だにしなかった出来事に「おーい、長生きしろよ、未来はまだまだ予想もしない不思議な事が必ず起きるから」と、気が付くと周りの若者たちを諭し励ましているつもりになっているのだ。
そんな我が街(調子にのるな、だよね)が今大変なことになっている。むろんCOVID-19の惨劇だ。どの街よりも生活の無い殆ど住民のいないこの街のゴーストタウン化は凄まじかった。
緊急事態宣言中も恐怖は感じながらもやっぱり気になって出社していて、ある日の夕方などあの数寄屋橋の交差点に立っているのは僕ひとり、なんてこともあったのだ。
これってSF映画でしか見たことのない風景(ディストピア)だよね。
余談だけどロックダウン最中のロンドンでリモート演奏でなんと新曲をリリースしたストーンズ(しかも、かっこいい曲だ)に驚愕したのは僕だけじゃないだろうが、あの日銀座はストーンズの新曲のバックに流れていた世界のゴーストタウンの映像そのものだった。
ライトパブリシティも今年で70年この街銀座から一歩も出たことのない老舗のデザイン広告制作会社。
思うようにお客さん帰らず戸惑っている銀座の若手旦那衆たちを見過ごすわけにはいかない、ということでプロボノ(Pro bono)で応援することになり、早速企画会議、「おかえり GINZA」というコピーも生まれ、それをデザインされた暖簾(日本らしいメディアだ)にして主要なお店に掲げてもらうことにした。
すべり出しは好評で、まずは日本を代表する老舗のテーラー壱番館から始まって3、40店舗と広がって行くはずだ。
是非皆さま銀座にお越しの際はご覧いただければ幸いです。
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