お祭り
「オラァァ!?なんだお前!アァァアン?」
ワインのボトルを片手にした白人の大男が、
ガッツリ私の目を見ながら英語でまくしたててくる。
とっさに目をそらしてその場をやり過ごそうと視線を下げるも、
男の太くてムキムキな腕の立派なタトゥーがお目見えし、
逆に恐怖が増しただけだった。
ここは、スペインの小さな村の祭会場。
ラッシュ時の山手線のように込み合って身動きがとれない道で、
よりによってこの恐ろしい大男の目の前にスッポリとはまってしまっていた。
「ねえ、やめときなさいよ。」
連れらしきブロンドヘアの美女が、
なんだか色っぽい英語で声をかけていたが、
大男の、これまた大きくてごつい手が私の方に向かっていた。
ああ、なんでこんなことになっちゃったんだろう…。
私はどちらかというと、
真面目に生きてきた方で、部活は茶道部。
小さい頃は三つ下の弟と取っ組み合いのケンカをしたことはあるけれど、
女子高育ちで、これまで荒々しいこととは縁がなかった。
そんな私が人生で一番のピンチを迎えていた。
(つづく。)
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今年新人賞をいただきました、高阪まどかです。(こうさかと読みます。)
新入社員の頃、席がお隣でとてもお世話になったお兄さん的存在、
福岡さんからバトンをいただきました。
福岡さんありがとうございます。
これから、どうぞよろしくお願いいたします!