ことばのタイムマシン
「遠刈田#01」とは。
宮城県蔵王にある遠刈田温泉街の
非公式な郷土史のこと。
(今月29日に遠刈田にて納本予定)
‐‐‐‐
2022年11月、
一般社団法人とおがったプロジェクトの
佐藤さん、永井さんにお声がけいただき、
友田菜月と私で遠刈田AIRに滞在しました。
まずはリサーチだ!と意気込むも、
資料がなかなか手に入らず苦戦。。
遠刈田には
歴史や人々の暮らしのアーカイブが
あまり残されていないようなのです。
(正確には、あってもなかなか
手の届かないところにあるのだと思います)
温泉街としては珍しいことではないらしく、
かつては住み込みの職を求めて人が集い、
中には“訳あり”の方々もいたりして、
記録を詳細に残すのが困難だったとも
言われていたりします。
なので、まちを歩いて見てまわったり、
住人の方々へのヒアリングさせていただいたりを
私たちはとにかく繰り返しました。
とはいえ事実を把握するには限界があります。
そんな中見つけたのが、ある”裏庭”でした。
伸び切った植物や落ちている瓦礫、
廃墟のような蔵、土に埋まったゴミ。
長い間、眠り続けていたかのような
手つかずの風景が転がっていました。
それらを一つひとつ丁寧に拾い集めると、
歴史が浮かび上がってくるようです。
この場所がおそらく旅館だった頃の欄干や、
居酒屋だった頃の何枚もある同じ柄の皿、
託児所のような場だった頃の子どものおもちゃ
(まちの人が「としばっぱ」というおばあちゃんが
住んでいたことを後に教えてくれました)、
などなど。
この光景こそが、まさに
ことばなきアーカイブ、
郷土史なのだと感じました。
私たちは裏庭に
まちの人々を招きいれる道をつくって、
直接見てもらうことを
滞在の成果発表としました。
それから1年。
1冊の巨大な本がもうすぐできあがります。
裏庭やまちの風景を記録した写真と
住人のインタビューや調査の記録などをまとめた
「遠刈田#01」です。
写真だから伝わること、
ことばだから伝わることを大切に。
今を生きる人とまちの姿を
できる限りこの本に閉じ込めて、
タイムマシンのように百年、千年先まで
届いてくれればと願います。
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