リレーコラムについて

しゃーしい時代になったばい

門田陽

今、大阪梅田のアパホテルのシングルルーム、

 

ひとりのコピーライターがPCに向かって

コラムの原稿を書いている。

 

今から1時間前、そのコピーライターはあべのハルカス近鉄本店で

落語を聴いていた。趣味の落語鑑賞が度を越し最近は好きな咄家を

追っかけて全国をまわっているのである。

 

今から1日前、そのコピーライターは新しいPCの性能のよさに

満足していた。これがサクサク動くということだ。

前日まで使っていた古いPCは立ち上がるのに180秒ほどかかっていた。

それが新しいPCだとわずか10秒もかからない。

「タイパ」とはこういうことかと実感した。

だがそのコピーライターは「タイパ」というコトバは嫌いである。

付け加えるとそのコピーライターは「見たことのない景色」というコトバも

嫌いである。新しいPCをプリンターに繋いだ。ここまで書いたものを一旦

印刷して確認しようと思った。

するとプリンターが「ガガガガ」という妙な音をたてて動かなくなった。

寿命のようだ。

 

今から2日前の朝、そのコピーライターは長年愛用してきたPCの前で

途方に暮れていた。いつものように朝起きてPCを立ち上げたところ

モニターが明らかに変調を訴えたのである。画面がウルトラQのオープニング

(このたとえがわかる人は昭和生まれだろうな)のような模様で覆われ

再起動しても電源を切ってもバッテリーをはずしてもビクともしないのだ。

これはまずい。仕事に大きく差し障る。そういえば後輩の米村(大介)くんに

5月15日(2日後)からのリレーコラムを頼まれていたはず。ほんとにまずいな。

そこで機械に強い何人かの友人にラインで写真を送ったところ買い替えを

勧められたので朝10時ビックカメラの開店と同時にお店に入りPC売り場で

一番人気の機種を購入。設定もすべてビックカメラにお任せ。

珍しくスムーズだなと思っていたら担当のS原さんから「お客様のドメインの設定を

しますのでメールアカウントと受信サーバー、受信ポート、暗号化の有無を教えてください」

と言われ、今の質問は日本語なのかと疑うくらい何一つわからず自分にきたメールすらも

開けない事態。確かにもう昭和ははるか遠くに見えなくなった令和の今、個人情報が

大事なのは承知の助ではあるが自分の口座やクレジットカードやポイントカードの

情報を見るだけなのに、なぜ信号機や横断歩道やバスの写真をクリックしないと

いけないのかわからない。しかもどの写真もなぜか海外のもので特に海外の横断歩道は

見分けが難しいと感じるのはそのコピーライター(中高年の男)だけなのか。

 

今から2日前の午後、そのコピーライターは一旦家に戻り壊れた古いPCを持って再び

ビックカメラに赴く。すると先ほどの担当のS原さんがてきぱきと動いてくれて

古いPCからドメインデータを取り出すことに成功。見た目はそのコピーライターと

変わらないくらいの白髪のオヤジのS原さんがキラキラ輝いて見えた。

コロナの前の時代なら抱きしめたかもしれない。

 

今、大阪梅田のアパホテルのシングルルーム、

ひとりのコピーライターがリレーコラムの初日分を書き終えた。

 

 

※博多弁タイトルのワンポイント講座①

しゃーしい・・・標準語で一番近いのは「うるさい」かな。ただ単にうるさいではなく、

「めんどくさい」という気持ちが入っています。「新しい担任の先生、しゃーしかねー」

みたいに使われます。

 

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