オレンジの妖精
その名も「さくさく かつモン」(かつが平仮名、モンが片仮名)。
とんかつ新宿「さぼてん」の公式キャラクターで、
元気のない人を見るとほうっておけない妖精だそうです。
かつモンの紹介―とんかつ新宿さぼてん
さるぼぼのように赤い顔、角度によって変わる表情(鼻が特に可愛い)、
とんかつの衣を模したふわふわの触り心地、片手で操演できる携帯性。
さくさくカツもんは、その愛くるしさによりたちまちわが家のアイドルに。
依頼もないのにオリジナルのカツもんの歌までつくりました。
食卓にかつモン。寝室にかつモン。リビングにかつモン。
そのオレンジ色の球体は、時々遊ばれ、だいたい家のどっかに転がっている状態でした。
そして、近所への外出時にお供することもありました。
家にきて2年目の2021年。子どもの誕生日に、
家のぬいぐるみたちを集めて記念撮影をしようとしたところ。
かつモンがいない。
おっかしーなー、ちょっと前までソファーにいたよね?
食卓のティッシュボックスの上にいたこともあったよ。
いや、休みに義実家に連れて行って置いてきちゃったんじゃないか?
「いそうなところ」を一通り捜索しましたが、消息不明。
小さいぬいぐるみなので(もともとはボールチェーンがついていました)、
何かの後ろに落ちたり転がったりしているのではないかとの楽観的観測で
ま、どっかにいるでしょ、という温度感を保ちつつ、
ベッドをひっくり返したり(そして掃除)、
会社の先輩の家で実際にあったという、ないないと必死で探していた高級時計が
置いた覚えのないクローゼットの中で見つかった逸話を思い出して、
押し入れの中身を全出ししたり(そして掃除)。
でも彼(He?She?It?)は見つからず。
家族中のスマホやカメラに写っている姿をさかのぼりながら探すと、
不在に気づいた日の約3ヶ月前まで
オレンジの球が部屋に転がっているのが確認されました
(アナログですが、昔旅行中に置き忘れた叔父の老眼鏡を
この「いつまであった?」作戦で発見したことがあります)。
さて、その後です。
私自身は3ヶ月以内に彼(He?She?It?)を家の外に連れ出した記憶はありません。
家族たちもイマイチ自身はないものの、「絶対にないとは言い切れない」くらいの状態。
外に落とした場合「道」「飲食店」「商業施設」「プールのロッカー」「コンビニ」などが
考えられ、いくつかには問い合わせもしましたが、忘れ物・落とし物の
保管期間がそもそも3ヶ月であったり、
「これですか?」と出てきた「ぬいぐるみ」が他のものだったりしました。
前日のコラムに書いたような、財布やキャッシュカードであれば
警察に届け出という方法もあり、治安の良い日本では見つかることも多々あります。
しかし、キーホルダーサイズのぬいぐるみ(記名なし、落とした日時・場所不明)は
落とした人にとっていかに大事でも、見つけた人や届けられる警察や施設にとっては
「価値があるもの」とあまり見なしてもらえません。
今年の夏休み、“ぬいぐるみを起点に、個人と社会が抱える様々な課題解決をめざす”
株式会社Fluffy Communicationsさんが開催する「ぬいぐるみの保育園」に
(かつモンではない)ぬいぐるみを通わせました。
1990年代にローワン・アトキンソン(Mr.ビーン)がクマちゃんを寝かしつけてから
部屋を出るシーンを見て感動した頃よりはぬいぐるみに対して世間が
寛容になってると思いますが、ぬいぐるみを友とする人にとって、
ぬいぐるみはほとんど家族みたいなものなのです。
※「わかるわかる!」という大人が3割くらいいるのか1割もいないのかマイノリティ加減がわかりませんが
そんなわけで、家の外の可能性が消えたわけではないのですが、
家の中での事故の可能性も捨てきれません。
脳内シミュレーションをいろいろしてみます。
・手にカツもんを持っている時に上の空になって、ふだん開けない箱にしまってしまった とか
・机を片付けようとして、ぜんぶの有象無象を紙袋に「一時避難」させたつもりが、
見た目が汚いので後でゴミと勘違いして捨ててしまった とか
・かごにぬいぐるみたちを入れて「一時避難」で押し入れに入れたら、かごが倒れて、
小さいカツもんはすみっこにすっとんで行ってしまった とか
(このセンは押し入れ「全出し」で消去)
・何かのはずみで、着ていないコートのポケットとか、袋とかに
スッと入ってしまい、そのまま忘れてしまった とか・・・
・外で落としたでしょ! と言って、アルコールを吹きかけたキッチンペーパーで消毒し、
まるめたキッチンペーパーと一緒にゴミ箱へダイブ? とか
ファミリーレストランのガチャガチャのカプセルにカツもんをつめて
転がすような遊びもしていたので、世を儚んで家出してしまったのだろうか・・・ とか。
「なくしもの」がどこから出たかという人の経験談を検索してひっかかった、
「家の中でなくしたアクセサリーが、引越しの時には出てくるだろうと思っていたのに
出てこなかった」という話を読んで落ち込んだり。
いないとなると寂しさは募りますが、明るい想像もしてみます。
絵本「フェリックスの手紙」のウサギ(フェリックス)のように、カツもんも
じつは世界を旅しているとか、新しい持ち主のうちでもっとうまくやっているとか。
もともと妖精ですし。
そして、とはいえ家の中ではぬいぐるみに限らず、あやとりのひも、記念バッヂ、
本、洋服etcがかわるがわる行方不明になっており、
「別の子(クレーンゲームでとったアプリコット色のヒヨコ)が
毛糸の玉の中から発見された」事例もあるので、また
あのオレンジ色の毛玉と再会できる日がないとも言い切れないのです。
いつか「おかえりカツもん」と、言える日が来ますように。
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