リレーコラムについて

コピーライターのプロセス価値②ファインディング

渡邉寛文

デジタルマーケティングの業務には効果測定が付きまといます。
言うまでもありませんが、紙媒体を中心としたアナログメディアとデジタルメディアの大きな違いはスピーディーに広告成果の数値が確認できる点だと思います。デジタルメディアの台頭は、高速かつ高精度な効果検証を可能にし、広告を様々な角度から評価できる施策へ進化させ、マーケティングに柔軟性を与えました。結果、広告主は広告代理店を含めたマーケティング支援プレーヤーにアカウンタビリティを求めるようになり、マーケティング支援プレーヤーは広告出稿後に報告書の作成業務に奔走することになったと思います。

かつて紙媒体を中心としたアナログメディア全盛期の広告出稿における報告は、「ちゃんと出てますよ」という電話だけのやり取りや掲載実績の写真とともに1~2行の規定の文言が書かれているだけの形式的な資料が主だったと思います。しかし、デジタルメディアが当たり前になった今の時代はそれが通用しません。書式や形式は実行を担当する各社によって様々ですが、メディア別の成果・クリエイティブ別の成果・期間別の成果・ターゲット別の成果などについて言及する「個別評価」とそもそもの広告出稿の良し悪しについて言及する「全体評価」などを報告書としてまとめることが求められます。広告出稿のたびにです。

この報告書の中に「ファインディング」というパートを設けるケースがあります。「ファインディング」は主に全体の実施内容から読み取れる発見をまとめるパートです。この狭義を含めた広義の「ファインディング」でコピーライターの視点が活かせると考えています。

話しはやや逸れますが、このリレーコラムの説明文の中にコピーライターは「花形職業?」という記載がありました。本当でしょうか?
非常に簡易的ではありますが、検索動向を軸に検証してみたいと思います。

検索動向は「世の中の意識」に起因しボリュームが変動します。検索ボリュームが少なくなるということは、世の中の人たちがそのキーワードに対して興味を失くしたか、それが当たり前になったか、あるいは他の言語に置き換えられたかではないかと捉えています。

デジタルマーケティングに携わったことのある方はすでにご存知だと思いますが、Googleが提供するサービスにGoogleトレンドというサービスがあります。Googleトレンドは世の中の検索状況の大枠を簡単に確認できるとても便利なサービスです。まずは下記をご覧ください。

https://goo.gl/4ngRbW

こちらは「ダウンジャケット」というキーワードの過去5年の検索推移です。毎年12月近くに上昇しており、夏場に下降しています。寒い時期に暖かい衣類へと意識が向くのはとても納得感がいく結果と言えるのではないでしょうか。

このGoogleトレンドを使って「コピーライターになるには」というキーワードの検索状況を確認してみました。すると非常に残念な結果が浮き彫りとなりました。「コピーライターになるには」というキーワードは、2004年の10月をピークに全体的に下がり続けています。

https://goo.gl/hKpUie

続いて「YouTuberになるには」というキーワードの検索状況を確認してみました。変わってこちらは2014年から急激に上昇しています。ちなみに2013年はYouTuberプロダクションUUUM株式会社が設立された年で、2014年はHikakinTVのチャンネル登録者数が100万人を突破した年です。

https://goo.gl/SVYiQ1

さらに念のため「広告代理店」「クリエイター」というキーワードについても確認してみました。これらは検索意図が非常に曖昧なキーワードとなるため参考程度にとどまりますが、「広告代理店」は2004年をピークに下がり続け、「クリエイター」は毎年徐々に上がり続けています。

https://goo.gl/RHkQjb

これらの結果から私は次のような仮説をたててみました。

「動画共有サイトやSNSを中心としたユーザー主体のプラットフォームの台頭により、クリエイターという職業が一般化し、コピーライターは花形職業とは言えなくなった」

断片的なデータからやや強引に導き出した上に、現職のコピーライターのみなさんの前であまりに率直かつ乱暴な仮説で恐縮です。

私が社会に出た2004年、広告業界は大人気業種で倍率100倍が当たり前の状況でした。就職企業人気ランキング上位には、つねに大手広告代理店がランクインしており、その広告代理店の最終成果物を中心地点としてアウトプットしているコピーライターはまさに花形の職業だったと思います。しかしながら、現在は、不幸な事件や若者の価値観の変化(マスメディア離れを含む)が重なり、コピーライターならびに広告業界は人気業種とは言えない状況に陥っていると考えています。

さて、大きく逸れてしまった話しを元に戻しますが、私はコピーライターの発見力にデジタルマーケティング時代におけるクリエイティブファインダーとして活躍できる可能性を感じています。かつてTCCの仲畑貴志 会長はWEBマガジンのインタビューで「コピーライターで重要な能力はチョイス」と仰っていました。コピーをチョイスするには、たくさんの情報の中から適切な情報を「見つける力」が必要だと思います。何千本・何万本というコピーからマーケティング課題を解決するための1本のコピーを選ぶ。その作業をひたすらに重ねてきたコピーライターという職種には、人並み外れた「見つける力」が備わっているはずだと思うのです。

スマートフォンが当たり前になりSNSの国内ユーザー数が軒並み1,000万人を突破し、いつでも誰でも世の中に何かを発信できる時代になりました。たくさんの信者を抱えた一部の個人は、すでにメディア以上の影響力を持っていたりします。子供のなりたい職業の1位がYouTuberだったり、様々な種類のクリエイターが脚光をあびる世の中になりました。クリエイターを束ねたクラウドソーシングという新しいサービスも生まれています。

SNSを眺めていると個人クリエイターの中には、信じられない才能を持った人がたくさんいることに気がつきます。私はそういった特別なスキルをもったクリエイターたちに表現で勝てるとは思えませんし、勝とうとも思っていません。共存・共栄することが得策だと感じています。マーケティング課題の特定とその解決策の提示こそが広告クリエイティブの役割だとするのであれば、表現することが広告クリエイティブのすべてではありません。広大なクリエイターの海の中から、マーケティング課題の解決に最適なクリエイターを人選し、適切なディレクションを行いながら課題の解決を図っていく。「見つける力」を持った次代の人材によるファインディングは、新しいクリエイターたちによる革新的な広告表現の創造サイクルの構築の一助となるはずです。

明日もマーケティングの実行プロセスにおけるコピーライターの武器について言及する予定です。

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