コロナから10年後の世界 D
コロナウィルスが世界で猛威を振るった。多くの感染者と死者が出たが、治療薬のアビガンが量産され、ワクチンも開発された。開発者のビル・ゲイツにちなんで、ワクチンの名前は『Windows 2023』と言われている。コロナウィルスで失った分を取り戻そうと世界は猛スピードで動き出した。
急激な経済活動の再開もあってか、異常気象による災害が多発した。ヨーロッパには熱波と寒波が交互に訪れた。アメリカには巨大ハリケーンが襲い、カリフォルニアとオーストラリアとアマゾンの森林は燃えている。日本では地震と洪水が起き、歴史的大雪と歴史的雪不足が繰り返された。
洪水に見舞われたインドの難民キャンプでコロナウィルスが発生した。過密で衛生状態が悪い避難所で感染は一気に広がった。ワクチンは高価で、一部の国でしか、接種することができなかったのだ。コロナと自然災害という2つの災禍に見舞われたインドの人々は「人間は大地の怒りを買った」と考えた。環境活動家のヴァンダナ・シヴァがリーダーとなって、人々は自主的にロックダウンを始めた。2020年のロックダウン時に、北インドでは大気汚染が晴れてヒマラヤが30年ぶりに姿を表したことから「Himaaly Phir 」(ヒマーリーフィル、ヒマラヤをもう一度)が合言葉になった。不要の外出を避け、家で働き、地域の店舗を応援した。一度、経験があったため、その動きはスムーズだった。経済活動は緩やかになり、環境は改善された。そして、はるか離れたデリーからヒマラヤが見えた。「神が現れた」とインド人は狂喜乱舞した。それは「デリーの奇跡」と言われ、運動はインド全土からさらには世界に広がった。
中国国民は町が封鎖された時の澄んだ空気を思い出した。美しい星空をもう一度見たいと思った。香港の民主化運動と結びつき、中国全土に広がった。香港のデモ参加者たちの「黒衣」と呼ばれた黒い衣装は「緑衣」となった。従来のデモは感染の恐れがあるので、自宅に籠り、緑の服を着て、オンラインで一斉に政府と世界各国にメッセージを伝えた。このやり方は「Green Demonstration / グリーンデモ」と呼ばれ世界各国に広がった。
イタリアのベネチアでは、2020年のロックダウン時に運河がきれいになった。もう一度、運河を綺麗にしようと参加者が緑の水着を着て運河で泳いだ。これは、パリのセーヌ川やロンドンのテムズ川でも行われた。
アメリカでは、ワクチンがあまりに高額であるため、摂取できない国民が少なからず存在した。憎むべきは、コロナウィルスでも、その感染源の中国でもなく、国民皆保険の不在による高い医療費にあると、グリーンデモが行われた。
日本では全国民にワクチンの摂取が義務付けられ、コロナウィルスは落ち着いていた。2024年まで延期されていたオリンピックが開催され、2025 年には大阪万博が開催された。不況で苦しむ市民にはお金が行き渡らず、オリンピックと万博に予算が割かれた。日本は深刻な不況から脱出する兆しが見えなかった。政府は財政難を主張し、年金は70歳からの支給になり、さらには、財政を圧迫しているとして、国民健康保険を解体しようとした。(アメリカの保険業界の圧力もあった)。これから、コロナウィルスのワクチンは高価になり、アビガンは一般市民が手に届くものではなくなる。市民は立ち上がった。2020年に政府から配布された不良品の布マスクを緑に染めて、グリーンデモが行われた。
これらは「緑の運動」と言われ、世界同時多発的に起こった。この動きはその後、緑の党となって、より具体的、持続的、現実的なアクションがとられるようになった。グレタ・トゥンベリが党首となった。左翼、反政府運動と評する人間もいるがそうではない。これはイデオロギーの問題でなく、コロナウィルスと異常気象という、自分とその子どもたちが生きるためには解決しなければならない生存の問題だった。SDGsと「持続可能な世界」を目指しても、地球は持続しない。国連は「勇気ある衰退」と目標を改めた。自らが、勇気と覚悟を持って、衰退していかなくては地球は存続しないのだ。日本にも緑の党ができて、国会の議席を少しずつ伸ばしている。そして、世界は少しずつよくなり始めている。
私は何度もグリーンデモに参加した。緑の水着を着て道頓堀を泳いだ。緑の党の広報も担当し、会報誌に何度も寄稿した。しかし、今は距離を置いて、独自で活動を続けている。党のやり方では生ぬるすぎる。世界を一刻も早く変えなくてはいけない。人類には時間が残されていない。このままでは本当に取り返しがつかないことになる。宇宙人から攻撃されると、地球は一つになるという。今、まさにコロナという人類共通の敵に対して人類が一つになるチャンスなのだ。人類団結のために敵は存在し続けなくてはいけない。コロナ、それは太陽のことである。古代エジプトではラー、ギリシアではアポロン、インドではスーリヤ、ペルシアではアトラス、アステカではウィツィロポチトリ、インカではインティ、日本では天照大御神。そう、コロナは神なのである。神が地球を守るためにコロナウィルスを遣わしたのだ。敵を創りたもうたのだ。私は5回感染した。しかし、まだ生きている。神は私を生かされた。私は選ばれたのだ。人は私をコロナ原理主義者と呼ぶ。何とでも呼ぶがよい。今すぐに変わらなくは地球は終わってしまうのだ。コロナウィルスよ、全世界へ広がれ。経済活動を止めよ。その後には、素晴らしい世界が待っている。
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