トンカツ
好きな食べものはいろいろありますが、あえて一つ選ぶとしたらトンカツです。
コピーライターになる前、トンカツ屋で働いていたこともあります。
厨房でひたすらトンカツを揚げたり、キャベツをスライサーに放り込んだり、
無心になって皿を洗ったりしていました。
赤坂という場所柄なのか、いろんなバイト仲間が出入りする楽しい職場でした。
ミュージカル役者を目指している子とか、吉本の養成所に通っている奴とか、
売れない演歌歌手のオジサンとか、学園モノのBL漫画を描いては出版社に
せっせと持ち込んでいる奴とか。中国人も何人かいて、広東語と北京語の
まったくかみ合わない口喧嘩を目撃することもしばしば。
ひとまわり上のシングルマザーの新しい彼氏の話を延々と聞かされることもありました。
社割でまかない弁当が買えたので、
トンカツ屋での2年半は週3~4回トンカツを食べていました。
休憩時間、ビルの裏口の冷たい石の階段に腰かけて、バイト仲間と駄弁りながら
むさぼるトンカツはひとしおでした。
そんなにトンカツばかり食べていたら普通嫌いになりそうなものですが、
僕の場合、そうした思い出もあわさって、トンカツは無性に愛着がわく食べものなんです。
漫画「美味しんぼ」の「トンカツ慕情」という話も好きです。
「トンカツをいつでも食えるくらいが、偉すぎもせず貧乏過ぎもしない
ちょうどいいくらいってとこなんだ」みたいなセリフがあって、
妙に心に刺さりました。そのセリフに「トンカツ」以外のいろんな食べものを
当てはめてみたこともありますが、トンカツ以上にしっくり来るものはない、
という結論に至りました。
ちなみに最近いちばんハマっているのは、衣が白っぽくて断面がピンクっぽい、
低温でじっくり揚げた分厚いタイプのロースカツです。
次回はコピーに関することを書きたいと思います。