ニュージーランド滞在記 ~Masa出国する~
数年前の12月31日。
私と妻、そして2歳の息子は、
成田空港の出発ロビーでニュージーランド航空N90便の
搭乗案内のアナウンスを待っていた。
日本を離れ、南半球の小国ニュージーランドに渡る日が、
ついにやってきたのである。
そこから遡ること1年ちょっと前のこと。
私は当時所属していた部の上司を飲みに誘った。
「今夜ちょっといいでしょうか?お話が」
革ジャンがよく似合うその制作部長は
「おう、いいよ」と軽やかに答えた。
その夜。焼き鳥屋で単刀直入に
「会社辞めたいんですけど」と告白する私に対して、
ビールを流し込みながら軽やかに「Why?」と革ジャン(敬称略)。
「ニュージーランドに行きたいのです」と私。
今度は、両目に太いゴシック体で「Why?」の
文字が浮かび上がる革ジャン。
「Because…」それから私は、
時間をかけていかにニュージーランドが
素晴らしい国かを滔々と語った。
アメリカのロックバンドGuns N’ Rosesの代表曲「Paradise City」は、
こんな一節からはじまる。
Take me down to the paradise city where the grass is green and girls are pretty…
俺を楽園の街に連れて行ってくれ
そこは芝が緑で 女の子たちもプリティなのさ
隣の国の芝は青く見えた。
国土の半分が牧草地のニュージーランドは、
見渡す限り美しいグリーンの草原である。
解像度が高くどこまでも青い空。
朝は鳥のさえずりで目覚め、夜は無数の星に包まれて眠る。
ガールズはみんなプリティ。
So far away… 日本から8,877キロ。遠く離れたパラダイスに、
私は、私を連れ出したかった。
「他の会社に行きたいとか、
独立したいとかならお前を止めようかと思ったが」
革ジャンは、水着の女性がジョッキを持って微笑んでいる
ポスターを遠い目で見ながら、
「そんな理由じゃ止められないだろ」
と呟いて焼酎ロックをあおった。もう、後には戻れない。
つくねにカラシをつけすぎたのだろう。
私の目はすこし潤んでいた。
出国となった大晦日、成田からオークランドへ向かう
ニュージーランド航空の機内で静かに年を越す。
そして、元旦。
私と妻、2歳の息子の3人は、
南半球の楽園に降り立ったのである。
そして、夏真っ盛りであるオークランドのその日の天気は、
土砂降りだった。
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