ラブレター④
教壇に復帰して間も無く、ガンが再発する。
なんどか入退院を繰り返したのち、
市外の大学病院から、近所の国立病院に転院することになった。
僕はその理由を分かろうともせず、
日に日に弱っていく父にも気づこうともせず、
いつか退院して一緒に生活できることを疑わなかった。
死期が迫っていることを知らなかったのは、
家族でも僕一人だったと思う。
厳しい食事制限を無視して、
僕はこっそりチョコミントアイスを買ってきていた。
父はいつも一口しか食べないので、ほとんど僕が食べるのだけど。
そんな中、八月に容体が急変する。
担当医師から親族を集めるように言われ、
僕はその時、ようやく状況を理解した。
しかし、父は持ちこたえる。
医師も奇跡だと言っていた。
集まったみんなは、更なる奇跡を願った。
それから僕は、夏休みの補習も休んで、
父の病室で長い時間を過ごすようになる。
そして、命日となる九月二日を迎える。
慌ただしく葬儀を終えたころ、僕はようやく気づく。
なぜ「おはよう、今日は九月二日だよ。」と伝えた後に、
父の心拍数は下がり始めたのか。
やっぱり僕の父は、最高だった。