リレーコラムについて

今考えるとコピー鍛錬だったと思うこと④  〜編集長〜

中野仁嘉

博報堂が出版している「広告」という雑誌がある。

 

1つ前の編集長時代、僕は編集員としてこの雑誌を作っていた。

 

「野生の直感を大切にするアナログ発想マガジン」

という謎の編集テーマのもと、2年にわたって全部で8号出版した。

この編集長の部に当時所属していたのもあり、半ば強制的に編集メンバーになったが、

ほぼ9割趣味の企画を考えては、取材と称して海外出張にいきまくる、

そんな楽しい編集生活を送ることができた。

 

そして、この編集長こそ、僕のPRの師匠である。

 

この人は、とても不思議な人。

日本で5人しかいない水難救助の免許を持っている、

複雑骨折したまま3時間車を運転して病院にいった、

雪でもTシャツ、

北海道に飼っている10頭の犬の餌代が高すぎて自分は3畳の家に住んでいたなど。

(半分噂も入っているが・・・)

 

雑誌の編集テーマにもあるように、

見た目も趣味嗜好もかなりのワイルド系であるが、

仕事に関してはとにかく緻密&ロジカル。

A3一枚にまとめる企画書を好んで作っていたが、

緻密が故に級数が小さすぎてプレゼンの時に読めなかった時もある。

 

10年弱、一緒のチームで仕事をさせてもらっていて、

自分の仕事の型はたぶんこの人の考え方がベースにある。

 

この人はよく会議で、「課題ってなんだろうな?」と言う。

言い換えると、どう面白いのか?ではなく、

このブランドには今何が必要なのか?ということを最初に考える。

 

当然のように思うかもしれないが、

意外とアイデアが先行しすぎるとできていない時がある。

 

だから、この人との仕事では、

いきなり企画案たくさん持っていくとか、

視聴数を追いかけただけのバズ動画をつくるとか、

タレントネタで朝の情報番組に取り上げられようとするPR発表会とか、

結局これ、何のためになったんでしたっけ?と思う仕事があまりない。

 

最初は、課題、課題、課題、課題、うっせーなーと思っていたが、

無駄なこと見極める目が養われ、

ブランドのためになる本質的なことを突き詰める、

筋肉質なコミュニケーションを考えるという、

当たり前だけど見落とされがちな思考の鍛錬ができた。

 

最近はあまり仕事をする機会はないが、

安い居酒屋でなみなみ注がれた黒霧島を嬉しそうに飲みながら、

下ネタを話し続ける、この人を一生尊敬しつづけると思う。

感謝しかない。

 

 

————————————————————–

 

 

と、4回にわたって書かせていただいたコラム。

社会人人生を振り返るようなものになってしまい、

シンプルに人との出会いに恵まれた、あらためてそれを実感しました。

 

そして、TCC会員になれたことで、

たくさんの出会いがありました。

 

来週からは、入会年次同期である、水野百合江さん。

 

授賞式でもあまりお話できなかったので、

コラムとても楽しみにしています。

 

1週間ありがとうございました。

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