仮説とその検証3/酒(2001年)
その新入社員には、仕事がなかった。
新入社員だからだ。そういう時代だった。
目の前には、仕事ではなく、
人権を啓蒙する社内スローガンの募集パンフレットがあった。
1件入賞で図書カード5万円。応募しない理由が見当たらない。
その新入社員は同時に、酒が飲めない自らの処し方も考えていた。
飲みニケーションという言葉が不動の4番だった時代(と会社)。
就職内定をもらった会社の中で
「一番自分に合わなそうな会社」を敢えて選んだから、
この課題には遅かれ早かれ直面することは予感していた。
隣の部は、部長命令で17:30になると全員強制で雀荘に行ったりしていた。
そんな環境で「酒が飲めないんです」と上司や先輩に直接言うことも、
やや憚られる。そこで新入社員は一つの仮説を立てた。
【仮説:人権のスローガンで、酒が飲めないことをアピールするとうまくいく(はず)。】
なんかいいスローガンで入賞すれば、
「こいつに仕事ふってみようかな」と先輩に思ってもらえるかもしれない。
一石二鳥。ハイブリッド戦略。
そして新入社員は、一つのスローガンを考えた。
「俺の酒」が、飲めない人もいます。
このスローガンともう一つ、
マスメディアをややディスったスローガンで、
図書カード10万円分を獲得した。
(5万円分はニュー新橋ビルで速攻換金し、スーツ代にした。)
この新入社員は、入社以来、理不尽な飲酒に巻き込まれることなく
今年社会人20年目を迎えた。
仮説が、人生のちょっとしたレールを敷くこともある。
今日、みなさんはどんな仮説を立て、検証しましたか?
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