再会の夜
昨夜、かつての同僚と飲んだ。
20年ぶりだった。
驚くほど博識で、
ひくほどピュアで、
疎ましがられるほどフェアな男だった。
本当のことを言うとみんな嫌がる。
そう言ってよく夜中に「本当のこと」しか書かれていない企画書を見せてくれた。
出禁になりそうな匂いがプンプンする怪文書スレスレのものだったけれど、
不思議とクライアントに愛されていた。
まっすぐな性格で
しょうもないプチ権力をみつけると相手がどんな立場であれ
その根拠のなさを見事に言葉にして無力化しようとする。
当時は横にいてその正義感がどこから湧いてくるのかわからなかった。
そのうち広告とか会社とかそういう仕組みに飽きてしまい
パッとやめてしまった。
博識がすぎると、哲学的な生き方に走るのだろうか。
それからその日暮らしを徹底して
電気も水道もない家に暮らし
お金を貯めては外国で働いてきたそうだ。
なんとかなるんだよと笑う。
かわんないねえと笑う。
20年なんてそんなもんだと笑う。
フランス語を勉強していると言っていた。
それから最近読んだ本の話をしはじめた。
ほとんどが知らない本だったけれど
そのどれもが面白そうで
なんの役にもたたなそうだった。
帰り道にふと
僕たちは持ち時間を減らしながら生きているのだと気がついた。
増えることなんかない。
でもだからって、
充実しなきゃいけないってもんでもないんだなこれが。
水谷はなんかかっこよかった。
連絡先をききそびれたから
会うのはまた20年後とかかもしれない。