リレーコラムについて

別れ話③

丹羽貴紫

厄介なタイムカプセルが発掘されました。

部屋の物たちどうするか会議の話を昨日書きましたが、
全てのものを分け合い切ることは難しい。

細かいものなどはどっちともなく
どっちかの荷物に混ざってしまう。

・相手が使っていたアクセサリー
・元々相手が持っていた置物
・歯ブラシ(置いていくな)

時に捨てるに捨てられない呪物化
してしまうことが少なからずある。

現像前の使い捨てフィルムカメラが3個の特級呪物。
棚の色々ごちゃごちゃエリアから見つかりました。
現像代も高いので、なんとなくしまっていたものです。

劇中で銃が出てきた場合、
その銃はかならず発砲されなければいけません。
引用:劇作家チェーホフ

厄介なタイムカプセルが発掘されたわけです。

遅かれ早かれ現像することになるんです。
問題はいつ現像するのかということ。
いつ撮った写真であれ、現像した瞬間はフレッシュ。
現像したてのフレッシュな元恋人が写っているはず。

①別れ話の直後
無理。
おそらくまぶしい笑顔の2人が写っているはず。
別れ話のちょい冷たい顔の記憶が新しい中で、
ギャップで心乱れ鬼長文ラインを送ってしまいそう。
いい感じに別れたとしても台無しになってしまう。
恋人にあげたプレゼント代を別れた後請求するのと
同じくらいに台無しになるポエムを送ってしまう。
コピーライティングの力の無駄づかいをしてしまう。

②3年後
悪くない、のだけど・・・
その時に新しい恋人がいたらどうだろうか。
現像したての元恋人はやはりフレッシュすぎるはず。
昔撮った元恋人の写真を懐かしむのと、
現像したてフレッシュ元恋人に再会するのでは
全くもって意味合いが違う。
心の浮気だと言っても過言ではない。

③10年後
結構いい感じだ。
ライフステージが変わっているだろうし、
未練めいたものなど全くないはずである。
SNSで近況を知れる射程圏内でもあるので、
それぞれの選択の一次的な結果を知ることもできる。
おそらく綺麗な思い出として純粋に懐かしむことができる。

④50年後
かなり素敵だ。
海辺の家のロッキングチェアに腰掛け、
気に入ったワインを傾ける余生。
昔の恋人の笑顔がフレッシュに蘇る。
元恋人はあれからどんな人生を送ったのだろう。
あの時、違わなければ自分の人生も変わったのだろうか。

「おじいちゃーん、この人だあれー?」
誰だろうなあ。忘れちゃったなあ。

いや、僕の人生はこれでベストだったのだろう。

悲しいことがあると開く皮の表紙
卒業写真のあの人はやさしい目をしてる

町でみかけたとき何も言えなかった
卒業写真の面影がそのままだったから

人ごみに流されて変ってゆく私を
あなたはときどき遠くでしかって

話しかけるようにゆれる柳の下を
通った道さえも今はもう電車から見るだけ

あの頃の生き方をあなたは忘れないで
あなたは私の青春そのもの

人ごみに流されて変ってゆく私を
あなたはときどき遠くでしかって

あなたは私の青春そのもの
引用:松任谷由実「卒業写真」

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