リレーコラムについて

博多天神 1989

一倉宏

「コピー100TEN」で解説ツアーをおこなった
その日(7/11)のことでした。
ある参加者が、あるコピーのパネルを指差して
「いまこれバズってますよ、昨日から」と。

いじわるは少年の I  LOVE YOU でした。

1989 ピラミッドゾーン

え、なんのこと?
教えてもらったのがこの歌です。

乃紫/初恋キラー

1行目だけなら偶然もありうるけれど。
2行目も対になっていたコピーと同じだったから。

なきむしは少女の I  NEED YOU でした。

ピラミッドゾーンは福岡のデパート岩田屋系列で
博多区天神にあったファッションビルです。

モノクロの石ひとつの写真に「少年」のコピー。
大小ふたつの石がある写真に「少女」のコピー。

ただの石ころの写真がファッションの広告になる。
そこがビジュアルとことばの関係のおもしろさ。
無機質にみえる写真でも、コピーをつけると
擬人化されたり、比喩となって、違ってみえる。
そのいい例と思うのですが・・・それはともかく。

このコピーは、こうして「引用」されて。

そして、厳しく「否定」されています。

いやいや、むしろ感心したのです。

乃紫さんの言語センス、見事です。

まいりました。たしかにそうですね。

2024年の、いまだったら。

ジェンダー・ステレオタイプの見本のようだと
いわれても、認めざるを得ません。

「きれいなおねえさん」も、ルッキズムではと
批判されることも、十分に予想されます。

コピーもことばなら、その責任があります。

そして、消費期限のある、なまものなのかも。
そんなことも思ったりしました。

 

私のリレーコラムは、これで最後になります。

35年前のある日、博多の天神で、ある若者が
ある広告に出会って感銘を受けたといいます。

それは1989年にはありえたことだったと
少々自己弁護をしたかったがために・・・
締めくくりはこのエピソードにしました。

その本人に登場願うとしましょう。
35年後の高崎卓馬にバトンを渡します。

 

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