吉兼睦子は静かに暮らしたい
吉兼睦子(よしかねむつこ)は90歳を超えている。
僕のばあちゃんが、いまだに元気だという証拠は、
デイケアサービスで詠んだ俳句である。
「女盛り 散るのも忘れ 今日も咲き」
未だに赤い実がはじけている吉兼睦子の旧姓は「神尾」。
つまり、結婚するまで神尾睦子だった。
つまり、紙おむつ子だったのだ。
さぞや恥ずかしい思春期だったろうと思い、
いろいろ調べていくうちに、僕は驚くべき事実を突き止めた。
親戚や家族にすら、このことは言っていない。
なんと、
神尾睦子が生まれた1930年には
紙おむつはまだ存在していなかったのだ。
紙おむつが日本で発売されたのは1950年代後半。
神尾睦子が結婚したのは1955年。
紙おむつの出現の直前に、
神尾睦子は逃げるように結婚し、姓を変え
吉兼睦子になっていたのだ。
もし、結婚前の神尾睦子が現代に生きていたら。
結婚するときに名字を変えただろうか。
先日の都知事選挙のとき、
選択的夫婦別姓のニュースを見てふとそんなことを思いました。
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