リレーコラムについて

思ってたのと違う

小澤裕介

子どもの頃、腰が曲がっている祖母に、

それは痛いの?苦しいの?と質問をした。

「痛いわけではないんだよ」

という祖母の答えが、とても意外だった。

思ってたのと違う、と思った。

 

自分がその立場になるまでは、

わからないことがある。

どんなにアタマで想像を膨らませようと、

その実体に届くことは、まずない。

 

自分たちの職場においても、

歳をとるのって、痛いの?辛いの?

それとも悲しいの?

ずっと気になったまま、さすがに誰にも聞けなかった。

 

会社の組織の中で、徐々に役割が変わって、

現場の仕事をバトンタッチして、

いわゆるマネジメント側に回って仕事をする。

それって、クリエイターの墓場なのだと思い込んでいた。

 

でも、そんなこともないんじゃない?

という話をしたいなと思う。

 

いま、現場作業も少し続けながらも、

所属する局の人財マネジメントの仕事をやっている。

一緒に仕事してきた仲間だけじゃなくて、

もっとたくさんのメンバーと、

もっと違った接点でも関わるようになって、

「あぁ、そうなのか」と思ったことがある。

 

それは、『みんな、もがいている』ということ。

大げさでも、きれい事でもなくて、

本当に、みんな、誰もが、そうなのだと気づいた。

 

若手と中堅とベテラン。

スターと普通のクリエイター。

マスCRと新領域みたいな大雑把な括りでは、

とても語り尽くすことのできないダイバーシティと、

それぞれの大事なストーリーがあることを、

今あらためて思い知ったのです。

 

クリエイティブというのは、

その人が、どんな努力を実らせてきたか、

どんな挫折を経験してきたか、

そして、人生とどう折り合いをつけているのか、

そんなことが、表裏一体にアウトプットされる仕事だと思う。

ならば、そこに関わり協力していくこともまた、

クリエイティブと呼ぶんじゃないか。

 

思ってたのとは違う、

もう一つのキャリアが始まりそうだな。

そんなことを思ったりしている。

 

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