最後の一行職人
最後の一行職人、という仕事をご存じだろうか。
広告業界では、ボディコピーしかり、
「最初の一行」が大事だと言われる。
いわゆる、つかみだ。
しかし、「最後の一行」にこそ、
力を注ぎこんでいる業界の人もいる。
記事ライター職だ。
週刊誌の記事などで、最後むりやりまとめた感のある
「落ち」のような一文を目にしたことはないだろうか?
具体例をあげたい。
以下、記事タイトルと、その記事の「最後の一行」である。
【ハズキルーペ会長が衝撃告白「フジから全CMを引き上げます」】
フジの悲鳴は「キャッ!」どころではなさそうだ。
【PayPay中傷書き込み、契約偽装…乱倫の社内メール入手】
「ペーペーの社員だから」という言い訳はもちろん通用しない。
【ピエール瀧の盟友石野卓球“海外逃亡”に麻取はなぜ無関心?】
次はドイツがつかまっテクノか―。
(以上、週刊文春より転載)
なんとなくわかっていただけただろうか。
一言でいうと、
「誰がうまいこと言えと」と読者からツッコミをもらえれば勝ちである。
「最後の一行職人」とは、
まさに、その「最後の一行」を任される人間のことを言う。
この「最後の一行職人」の仕事が今、クラウド化している。
記事制作サイトにあらかじめライターとして登録しておくと、
「その日のトピック」が親元から送られてくる。
そのトピックにふさわしい「最後の一行」を書いて
採用されるとお金がもらえる仕組みである。
最近出版社にも働き方改革の波が押し寄せているので
そういったやり方で外注しているらしい。
ちなみに、私も登録している。
採用されると千円。
高確率で採用されれば日給3万円は見込める仕事だが、
これがなかなか難しい。
以下はすべて没になった「最後の一行」案である。
【前澤社長が直面した最大の危機「ZOZO離れ」】
・とまらない減益に、前澤社長の背筋もゾゾゾ!?
・社長として、“剛力”な手腕を期待したい―。
・金のキレメが縁のアヤメ!?
【『妻が綺麗すぎる』で話題の妻は元宝塚だった!】
・タカラジェンヌは、家庭の“タカラ”でもあったようだ。
・さすが元宝ヅカ、夫ヅカイも一流なようで―。
・小誌としては、歌劇団だけに“カゲキ”な動画も期待しています!
【令和「ご朱印」転売加熱「メルカリ30万円」】
・転売対策「元年」なるか―。
・ヘイセイを装っていた神様も、これにはもう「やめてくレイワ!」
・ご朱印騒動の“主因”は寺社仏閣のエンタメ化だった。
いかがだろうか。
前述のプロの仕事と比べると、やはり一段劣っているような気がする。
林真理子が昔、「ananを後ろから開かせる女」と異名をとったが、
私もいつか一流の「最後の一行職人」になって、
「記事を後ろから読ませる女」の異名をいただくのが夢である。
この話はフィクションです。
※週刊文春の記事のみ現実に存在。
最後の一行までお読みいただき、どうもすみまセンテンス―。
5536 | 2023.07.01 | 「ブレーンなんて読むな」 |
5535 | 2023.06.30 | 「オリエン中に企画を終えろ」 |
5534 | 2023.06.29 | 「15秒に入らない企画をもってくるな」 |
5533 | 2023.06.28 | 「カタギの人から電話しろ」 |
5532 | 2023.06.27 | 「PPMなめんな」事件 |