東海テレビプロジェクト

TRUEの都築です。

金城学院大学の都築です。

２月

東海テレビ報道部の土方さんが、大学を訪ねてきました。

１０年以上の間、公共キャンペーンＣＭをご一緒した記者さんであり、

ドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」「さよならテレビ」の監督です。

「もう一度、都築さんと組みたいです」

ラブコール、ありがたく受け止めました。

温めていたものがあったからです。

大学は、大きく変わりつつある。

世間が思う大学生像と現実には、乖離があるんじゃないか。

学生・若者のひと言では、くくれないんじゃないか。

何が撮れるかわからないけれど、

「自分のゼミをテーマにしませんか」と持ちかけました。

３月

プロジェクトは、動き出しました。

若い女性記者と、ベテランカメラマン、音声さんが、東海テレビのクルーです。

教室に入ってくるなり立ち位置を指示するカメラマンに、

学生たちは戸惑い、反発しました。

彼女たちにはテレビに映ることや、

個人への誹謗中傷や切り取られて晒される不安がある。

プロジェクトはいきなり止まり、学生との話し合いが続きました。

要望をまとめ、クルーと話し合うことから再スタート。

撮る側と撮られる側の距離が、一気に縮まりました。

学生たちが気になる社会問題を書き出すと、ホワイトボードがあっという間に一杯に。

「就活」「いじめ」「震災」「世代間ギャップ」「戦争」

選んだ５つのテーマを、５つのチームで追いかけることにしました。

学生たちのゴールは、それぞれの課題を取材してレポートすることと、

考えるきっかけを投げかけるＣＭを制作することです。

事前学習、取材先探し、取材、撮影、編集、スライド準備。

学生たちの日々は、怒涛のように過ぎていきました。

東海テレビはそれぞれのチームに密着して、

公共キャンペーンＣＭを制作することになりました。

説明会に思い思いの服装のまま、スマホを片手に突入した就活チーム。

いじめる側・いじめた側を体験した学生が、自分の過去と向き合ったいじめチーム。

元旦の被災から変っていない能登輪島の風景に立ち尽くす震災チーム。

バブル世代の大人たちと、膝を突き合わせて語り合った世代間ギャップチーム。

戦争体験者の話が自分ごとにできない戦争チーム。

自分にも試練が待っていました。

ペンを教え子に向けるのです。

誤解は、ないか。手加減は、ないか。

東海テレビ本社６階の狭い編集室で、

朝までモニターを見ながらコピーを書いていると、不安ばかり浮かんできます。

コピーのタイポグラフィをお願いしたピースグラフィックスの平井さんに

切り出した映像集を送ると、

「何を伝えたいのかが、もやっとする」と厳しい言葉が返ってきました。

編集最終日の夜明け前、平井さんから

「言葉と編集でこんなに完成度上がるのがドキュメンタリーの面白さですね。

いいもの見せてもらいました」

とメールが返ってきたとき、長かった綱渡りは終わりました。

そのまま大学の授業に向かいました。

５月３０日午前４時１２分ＣＭオンエア

無事に放送されたことをLINEで学生に伝えると、ふたりがスタンプを押しました。

しばらくすると、ひとつのスタンプは消えていたのです。

戦争チームの学生でした。

彼女は納得していない。無言のメッセージを受け取りました。

https://youtu.be/PClVBDgrBs4?si=gnwYdRh4BzEfb__b

７月４日 東海テレビプロジェクト発表

学生たちにとって、ゴールは公共キャンペーンＣＭではありません。

この日のために慣れない取材を繰り返し、

ダメ出しを何度もされながらスライドをつくり、

メンバー間に張り詰めた空気が流れながら、

考えるきっかけとなるＣＭを徹夜で制作してきたのです。

すべてのチームが発表を終えたとき、

プロジェクト最大の功労者である東海テレビ髙木記者が、

講評中に感極まってしまいました。

最後に挨拶に立った３期生ゼミ長の奥村も、

５ヶ月に渡るプロジェクトで積もった思いが溢れだし、涙が止まりません。

振り返ると、ゼミ生全員が泣いていました。

ハタチの成長に寄り添う仕事。

でも、成長させてもらっているのは、５０代の自分です。

学生たちには、感謝しかありません。

つづく