リレーコラムについて

水のように 空気のように

山口慶子

大量にコンテを描いていたので、それがまた捨てられない。
大自然とスポーツを追いかけて、海外ロケで描いたコンテはふた山。

 

海外僻地では、生き物に仰天することが度々ありました。

マレーシアのティオマン島では2mほどあるコモドトカゲ。
夜耳元で囁くように鳴いていたヤモリたち。
レストランのガラスの向こうに白いふかふかなカーテン
と思ったら、貼りついていた巨大な蛾。
スニーカーの中が濡れてきたぞと、
脱いだら血でパンパンに膨れたヒルたち。

知られていない生き物も入れると
地球上の総種数は、500万~3,000万の間だとか。(環境省HP)

ロケでは首狩り族や海賊に遭遇の注意も受けるから、
地球は本当に広くて多様性の塊です。

ロッキー山脈の撮影では、毎朝爆発させて雪崩を事前に防ぐ工夫。
動物に襲われないように鈴や銃を持たされながら撮影する工夫。

人間は知恵と工夫で道具をつくって命をつないでいるんですね。

100回以上は空撮でヘリに乗っていたので、
俯瞰の感覚が身に付きましたが、怖い思いも沢山しました。
欲しい絵を撮るために、空中でパイロットがエンジンを切って
落下しながらカメラを回した時は、「OH!My GOOOOOOOD!」

この命がけの撮影がFabricaに結びつくのですから
一瞬先は闇ではなく夢でした。
スポーツビデオ制作をFablicaでやらせてもらったのです。

Fabricaでは、「広告は社会へのメッセージ。」
「見終わった後に議論が起きるものをつくらなければ意味がない。」
と教えてもらいました。

オリビエロ・トスカーニさんの作品は常に強いメッセージを発します。
「ビジュアルは、ことばだ。」
という意味を深く理解したのがこの時でした。

今、映像として見返すことができないですが、
「水のように 空気のように」
このとあるブランドのコンセプトは、
サステナビリティーを考えよというメッセージを
内包していたのかもしれません。

 

コンテの片付けは、大きな紙や巻物のようにしたものがあるから、
美しく片付かないのが悩ましい。ふた山をひと山にしなければ…。

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