洗濯物あるんで帰っていいですか?
営業として配属された瞬間から、
いつ会社を辞めようかと思っていた。
異動の試験は3年半後。
長すぎる。
まあよくある暴走なのだが、
その時はそんなことしか考えることができなかった。
配属された先で新人歓迎会があった。
なんか芸やれ!という空気になり、
ライザップのCMの音楽を
口で奏でながらゆっくり一周回る、
という芸をやった。
まあまあウケた。
でもそういうことをした日の帰り道は
いつも最悪な気持ちだった。
「僕の歓迎会なのになんで帰りたい時に帰らせてくれないんですか?」
「洗濯物あるんで二次会行かずに帰っていいですか?」
飲み会があるたびに
先輩にそんなことを言って
相当めんどくさがられていた。
今になって思うと、
飲み会が嫌、とかそういうことではなく、
自分の現状が嫌だったのだと思う。
そんな僕がハッとしたのはとある営業の先輩からの一言。
「お前がもしも異動を決める立場だとして、
CRの能力はあるけど3年半無駄にしたやつと、
CRの能力も、3年半で培った営業能力もあるやつだったらどっちを選ぶ?」
そりゃそうなのだが、
どれだけ視野が狭かったのかを思い知らされた。
ある意味、人生を変えてくれた
いちばんのコピーだったのかもしれない。
僕がクリエイティブに異動する時、
先輩たちが送別会を開いてくれた。
流れるサプライズムービー。
そこには「おばあちゃんママ」が映っていた。
僕に秘密でわざわざ神戸に行き、
スナックで撮影してくれたのだ。
祖母の様子はいつも通りで、
ふざけてて、でも愛があって。
先輩にキスしようとしてたりして。
大いに笑った。
結果的にそれは元気だった頃の祖母が話す
最後の映像になったのだが、
とにかく感謝している。
暑苦しかったり、古かったり、
ラーメン8杯食べさせられたりしたが、
あの3年半のことを、
たまに愛おしく思ったりする。
先輩、またいつでも飲みましょう。
洗濯は終わらせておきます。
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