笑える絵本ベスト3
子育て中のうれしい再会は、
自分が子どもの頃に読んでいた絵本です。
実家の本棚に入れっぱなしになっていた、
ボロボロのお気に入りを拝借。
年齢ごとに子どもが興味を持ちそうなものを
ちょっとずつ本棚に並べています。
短い1冊の中に、
つい覚えてしまったり、
言ってみたくなる言葉があったり、
読み終わると、勇気がでたり。
ちょっとせつなかったり。ジーンとしたり。
とにかく、なんかいい気分になる。
なんだ、いいCMみたいじゃないか。
うまく説明できなかった感情を
一瞬で鮮やかに表現してくれる感じ。
ぎゅっと凝縮されたシーンや
ストーリーの切り取りの潔さ。
広告に惹かれた原点は、
絵本にあったのかもしれません。
ここで勝手ながら、
超私的な笑える絵本ベスト3をご紹介します。
第3位
『ぼちぼちいこか』
マイク=セイラー作/ロバート=グロスマン絵
いまえ よしとも訳
ぽっちゃり体型のカバくんが、
消防士、船乗り、パイロット、バレリーナなどなど、
とにかくいろんなことに挑戦しますが、尽く失敗。
でも、どんな失敗も笑い飛ばして、
マイペースにいこうと最後はひと休み。
というシンプルな話。
これだけだと、そこまでおもしろいの?
という印象かもしれませんが、
特筆すべきは、訳が大阪弁だということ。
「ふなのりは、どうやろうか。
どうも こうも あらへん。」
「うちゅうひこうし、ひこうできずー。」
といった具合に、
失敗に対してのコメントが
いちいち軽やかでチャーミング。
一人ノリつっこみ状態です。
訳者の今江さんは、大阪出身。
このコラムを期に少し調べてみると、
「毎日カバくんの顔を見ているうちに、
カバくんがどうやら大阪育ちみたいな顔に
見えてきてしまい、いざ訳そうとすると、
大阪弁でしか訳せませんでした」
と刊行時に語っていたそうです。
なるほど、たしかにカバくん、
ひょうきんでいい顔しているんですよねえ。
顔で既にトクしている芸人さんみたいな。
自分の幼少期、
まわりに大阪弁を話す人がいなかったので、
余計その響きが印象的だった可能性もありますが、
表題であり、最後のセリフであるの
「ぼちぼち いこか」は、大阪弁じゃなかったら
絶対覚えてなかったはずです。
第2位
『わにさん どきっ はいしゃさん どきっ』
五味太郎
こちらは、知っている方も多いかもしれません。
日本を代表する絵本作家である、
五味太郎さんの名著です。
歯医者を怖がるワニさんと
ワニを怖がる歯医者さんのお話。
もうこの人物設定だけで
最高におもしろいんですが、
お互い同じセリフしか発しません。
歯医者に向かうワニくん
「ゆっくり あそんでいたいけど
いかなくちゃ いけないね」
診察室に向かう歯医者さん
「ゆっくり あそんでいたいけど
いかなくちゃ いけないね」
お互い顔を合わせて
ワニくん
「どきっ どうしよう」
歯医者さん
「どきっ どうしよう」
という感じではじまり。
なんとか無事診察を終えると、
ワニくん
「たいへん しつれい しました いずれ また」
歯医者さん
「たいへん しつれい しました いずれ また」
と言い合い、ワニくんが歯科医院を出て
それぞれひとりになると本音が爆発。
ワニくん
「いやいや もう にどとは あいたくないね
だから はみがき はみがき」
歯医者さん
「いやいや もう にどどは あいたくないね
だから はみがき はみがき」
と教訓を得て終わります。
どちらのセリフにも全く無理がないのに
構成がバッチリ成り立っていて、
久々に改めて読んだとき
笑いを越えて感動してしまいました。
ふたりのなんとも言えない表情を
描ききっている絵の力もすごいし、
ワニくん明朝体、歯医者さんゴシック体で
言葉のフォントが分けられているのも気が利いています。
繰り返される愉快なセリフに、
子どもも大ウケ間違いなしです。
第1位
『リキの ずっこけじてんしゃ』
花輪かんじ作/こうの このみ絵
気の強い男の子リキは、
ママに叱られたことにうんざりして
家出を決意。
大事な自転車は置いていけない、
それなら大事なオウムもネコも、
ネコが好きなこたつも置いて行けない。
鍋や電気釜もいるねと、
あらゆるものを自転車に積みます。
そして、ガールフレンドのリリちゃんや、
宿題を手伝ってくれるパパも。
パパは風呂に入っていれば機嫌がいいので、
風呂ごと自転車で引っ張る。
そして、リキもペットもパパもいなくなると
ママは怒る相手がいなくなって困るからと、
終いには家出のきっかけのはずの
ママも風呂を沸かす役として乗ってもらう。
出発すると案の定、
自転車ごとずっこけて
ぐちゃぐちゃになる大惨事。
またママに怒られるという話です。
はちゃめちゃで、ナンセンスで
でも、一度はこんなふうに
家出してみたいと思うほど楽しそうで、
強烈に印象に残っている1冊です。
いいところは、
リキに全然反省している様子がないところ。
語りの中にも、
説教じみたことを押し付けてくる
トーンがまったくないところです。
最後、ママにまた叱られるリキは反発。
そこに、ガールフレンドリリちゃんが
加勢してママの足に噛み付いています。
このシーンに対して、
「これが ゆうじょうと いうものですよ」
と書かれています。笑
「リキは、かおそっくりの つよい子なので
なかなか まけません。
このつぎは、ママの じてんしゃで やろうかなって
かんがえているんです」
でおしまい。
ママと仲直りみたいないい感じにまとめず、
完全に子どもによりそったまま終わる感じが
ロックで痺れます。
作者の花輪さん、
調べるとフランス文学者でもありました。
三人称視点で淡々と書かれているところ、
主人公の自由奔放さなど、
何か通じるものを感じます。
残念なことに、
この絵本はもう絶版でした。
Amazonで検索すると
なんと、とある古本屋さんが1冊だけ販売中。
え、89万8789円で・・・
気になって読んでみたい方がいたら
石橋までご連絡ください。
ひとまず、お貸しします。