葡萄が、かみつく。
皆さん、こんにちは!日比野さんから引き継いで、このコラムを担当させていただく2004年入会の戸部二実です。コラムを書かせていただくのは、入会して以来の19年ぶり。その時間の中で、いろんな変化がありました。あの頃と比べるとコピーライターへの期待とかできることっていろんな意味で変わっていそう、と考えて、今回はなんとなく「コピーライターのいろんな道」というテーマで展開してみようかと思っています。
そのきっかけになったコピーをご紹介します。
それは、「葡萄がかみつく」というフレーズ。これはTCCの先輩でもある鵜久森徹(うぐもりとおる)さんの作品です。鵜久森さんはプロジェクト全体をよりよくする優秀なC Dとしての大きな見本のような方でした。残念なことに数年前に急逝されてしまったのですが・・・。
そんな鵜久森さん作「葡萄がかみつく」は、有名酒類メーカーのワイン事業部向けのスローガン。今でいうインナーブランディングの仕事です。自社農園を持つクライアントの課題は、安価なテーブルワイン部門の位置付けや差別化、働く社員のモチベートだったと聞いています。その価値を凝縮する言葉として生まれたのが「葡萄がかみつく」。
意図は、「ちょっとワイルドで野生味のあるワイン、そして、働くみんなも挑戦的・冒険的にね!」ということ。この事業部ではこの言葉を核にパッケージデザインや事業戦略を考えていくとのことでした。
ちょっと未完成な「かみつく」で終わる感じには、現在進行形=ingな気分や「そこから先は、社員の皆さんどうぞ」と委ねるムードがある。そのワインを飲んだら、葡萄のアグレッシブな感じを受けるんだろうなと期待も湧き、巧みに計算されている・・・。
私は、組織や企業にまつわる言葉を考える機会が多いのですが、だからこそ、この仕事が新鮮に胸に響きました。そして、直後に「これってコピーライターの新しい道だな」と。ポスターやC Mのように、みんなに届ける言葉を作るのも素敵だけど、こんなふうに見えないところで、事業や経営の意味をつけていく仕事もいいよね、と。さらに「この人なら、事業の見えない本質を結晶化させてくれる」と思われる鵜久森さんの存在に新しい輝きを見いだしていました。
とまぁ、そんな気づきから一歩一歩。大好きな、たくさんの先人コピーライターの仕事から学んだことを活かして、これまでコピーライターの仕事と思われてなかったジャンルまで手を伸ばしてみたいと。絶賛、実験中です。明日は、この実験の一環である、「社長になってみた」についてお話ししてみたいと思います。
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