リレーコラムについて

コピーライターとCMディレクター

中島信也

 さて、皆様の特別の恩赦をもってコピーライターじゃない僕が今こうしてここへの入場を許されている(と思っている)訳ですから、コピーライターの皆様にとって役に立つ、せめて「まめ知識」みたいなものはご提供しないとまずいですよね。

 そこで今日は「コピーライターとCMディレクターのあいだに愛はあるのか?」という人類の永遠のテーマについてお話させていただこうかと思います。この問題については太古の昔から諸説紛々飛び交っておりまして、「あるあるある!」、「あるかぃほんなも〜ん!」、いろいろでございます。

 でも僕は断言します。「ある」。

 前回お話したように僕はほんとにコピーライターになりたかった。そのための努力はきっちり怠りましたが。だから名刺に「コピーライター」って書いてあると「ひょえ〜っ」ってなってしまいます。まあ、最近は名刺にコピーライターって書いてあるコピーライターの人もだいぶ減ったような気もしますが。僕なんか書いてますよ名刺に「CMディレクター」って。でもそれがCMプロデューサーとどう違うのか答えられる人なんか普通にはいませんわな。コピーライターのほうがはるかに通りがいいんとちゃいますか?「ほう、コピーライター!奇遇やなあ!うちの甥もたしかゼロックスかなんかに勤めてましてな・・・」とぼけはる方もそんなにおられませんやろ?

 話がそれてます。とにかく僕はコピーが好きなんです。「コピーが好き」っちゅうのも広告の本質を取り違えてて「ナカジマサンって、いっがいと広告のことわかってないよ!」と大貫さんがまわりの皆さんに小声で断定されてる様子が早くも瞼に浮かびます。いや、たしかに僕、広告のこと意外とわかってないことはわかってるんですけど、コピーって僕、好きやなぁ。コピーに感心すること多いんです。

 コピーってふたつありますよね。ひとつは、コピーライターのちょっとびっくりするような目のつけどころに「おおーっ!」って唸るコピー。もうひとつは、コピーライターの新鮮なその言い回しに「ううーっ!」って呻くコピー。どっちもええよね、異文化、コミュニケーションっちゅうやつかな、失礼しました。いやそうではなくて、コピーライターの人がなんらかのことばを机の上にをぽっと置かれるその瞬間が、そしてそのあと唸ったり、呻いたりさせてもらうのが、たまらなく好きなんです。

 僕、やっぱりドメドメのドメスティックやと思います。日本語、日本語の響き、日本語のリズム、日本語で作られたうたい文句、うりことば、かいことば、音頭、なにもかもが大好きです。僕、それしかありません。ダサダサでダメダメでベタベタでも、ことばのリズムがうんまいこといってるCMやったら人に「えーっ!?」っていわれてもすきになってしまったり。だからそんな大好きな日本のことばを、コピーライターの人が大事に、しかも大胆にあやつっておられるのを目前にすると、僕もう、目の粘膜が潤んできて、人から見られると「目に星ができている」って状態になっているはずです。

 絵コンテを書くときにも僕にとってコピーはすごく大事です。CMディレクターはクライアントやスタッフに具体的な映像の設計図としての「演出コンテ」を書きます。これは僕にとっては撮影と同じくらい大事な仕事で、正直いうといちばんしんどい作業なんです。でもコピーライター主導の仕事で、ことばのながれそのものが骨組みになっている場合には、このコンテづくりが、すんごくしやすいんです。一応ビジュアル系ディレクターとしてやらせていただいておりますが、実は僕「ことば大好き少年」(うわっ!言うてもた!何時代の言いまわしや!はずかし!)でもうそとはいえない。

 ま、とはいえコピーなしの広告とか、英語のコピーの広告とかかっこええのんありますなあ。それはそれで好きなんいっぱいあります。一応ビジュアル系としてやらせてもらってますし。でもね、ちゃんと日本語で書かれたコピーの前に立つと、僕、しみじみ、こころから、いやほんまに、ええなぁって思うんです。僕だけとちゃうと思いますよ、ことば大好きCMディレクター。そんなCMディレクターとコピーライターのあいだにはぐくまれるのは、愛。

長くなってしまいました。でもふたりのあいだに愛は、「ある」。絶対に、「ある」。もう少しだけここにいさせてください。CMディレクター中島信也です。

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