リレーコラムについて

オレ、オレ、オレ!

笹島真祐子

名前にまつわる体験談をつづけてきましたが、
つい先日、名前のない電話が我が家を襲いました。
今をときめく、「オレオレ電話」です。
ニュースはもちろん、週刊誌やワイドショーをも賑わして、
日本列島知らない人はいないんじゃないかと思うくらい、一躍有名になった犯罪です。
そろそろ日本ではやりにくくなったらしく、海外に住む日本人を狙ったり、
女性をつかって「アタシ、アタシ電話」に変えてみたり、
いろいろ工夫を凝らしているらしいじゃありませんか。
それなのに。なんと、まだ、オレオレ時代真っ只中な人もいるようなのです。

その朝は、前日の作業が深かったこともあって意図的に寝坊をしており、
いつもより遅くおきて食卓に下りていきました。
すると、母が、電話を耳にあてたまま、固まって立ち尽くしているのです。
どうしたの?と、声をかけると無言で受話器を上にする。
電話口からは、「オレ、オレ! オレだよ、オレ!」が延々と聞こえてくる。
母は、どうして応えていいかわからない感じで、フリーズ状態にあったのですが、
娘がいっしょで少し気が大きくなったのか、
「どちらのオレ様ですか。」
と、たずねた。
相手はちょっとふいをつかれたようで、一瞬沈黙が走ったが、
「や、やだな〜〜、もう、オレだよ〜〜・・・」とまた、オレオレ連呼を続けだした。
沈黙で応戦する母。
そして結局このオレは、本題に入るきっかけがつかめず、自ら電話を切ってった。

地元の友人たちにこの話をしてみると、けっこう、経験者がいてびっくり。
オレオレ電話、ほんとに流行ってるのですね。
で、オレオレ電話にはいくつかタイプがあることが分かりました。
(その1)ハイテンションで、とにかく「オレオレ連呼」型。うちにかかってきたタイプです。
(その2)事件にまきこまれた直後を装い、やたらローテンションな「オレだけど・・・」型。これは、うっかり名前を呼びかけずにいられないそうです。
(その3)最初は「俺だけどさ〜」と、やさしい切り口で話に入るが、しばらく話につきあってしまうと「オレだっって言ってんだろ、殺すぞ。」と途中で脅しに変わるタイプ。友人のお母様はしばらく誰にも言えずに悩んだそうです。

こわいなぁ・・・。うちにかかってきたのは、ただのハイテンションなへっぴり腰でよかった。
しかし、それでも、うちの母はいまだにおびえていて、かかってきた電話をとろうとしません。
もう10日もたつというのに。
ほんとに、はやく終わってほしいブームです。

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