癒し系の翁
【Chapter 5 癒し系の翁】
その方は、一番年上の親友です。
はじめて逢ったのは、面接というカタチでした。
当時、フリーランスだった僕は、「まぁ、営業しとくか」くらいのノリで
その会社を訪問しました。
スキンヘッドで穏やかな笑顔。
しかし眼差しは閃光を放つ鋭い高僧のような風貌でした。
「まぁ、試しに(この会社に)入ってみたらどうですか?
ただ、せっかくフリーランスで築いてきたつながりは大切にしておいてください。
この会社、前途は不明ですからね。ハハハハハハァ」
マジかなぁ?たしかこの方、名刺では代表取締役社長になってるけど…。
キョトンとしている僕に。
「まぁ、一応会社の仕事を優先してくれたら、後は自由ですから。
バイトというか、自分の仕事を大切に…」
変な会社。でも最高の待遇かもしれない。
いや待てよ、バブルもはじけた昨今、そんなおいしい話は…
でもいいか、やばかったら辞めちゃえば。
と、フリーランスから宮仕え?へ逆戻り。
しかし、入社当初こそ、仕事があって忙しかったのですが、
「まれだなぁ、こんなに忙しい人は」と不思議がられ、
その後、3〜4ヵ月ほど全く仕事がなくてちょっとあせっていると
「ハハハハハ。いいじゃないですか、変に仕事なんてない方が…」
なっなんなんだぁ??????????
ただ、人間、楽なことにはすぐに慣れてしまうもんで、
毎朝出社すると出勤簿だけチェックして、
そのまま映画館やバーゲンセールへ直行。
(その方も、バーニーズニューヨークのセールにはよく出かけてたような)
もちろん、その方が言った通り、バイトと言うかフリーの仕事もやり放題。
他の代理店から届くファックスなどを社長が僕の机まで届けてくれたり。
「なんか面白そうな仕事じゃないですか。うちにもそんな仕事があるといいですね。
まぁ、会社の仕事じゃ、お金にならないか…ハッハハハッッハハ」と。
ありえない会社でしょ。
在籍2年が過ぎようとした頃には、
その方とは、社長と社員なんて煩わしい関係はまったく感じなくなり、
朝、机の上に「浅草でうまい店を見つけました。行きますか」なんてメモが置かれていて、
「OKです」と返えすと
「(会社のビルの)下の本屋で待ってますから、みんなに見つからないように…
一応まだ陽が高い時間ですからね」とお茶目な返事。
仲のいい先輩後輩みなたいな感じで、よく飲みに連れてってもらいました。
ところでその方は、もともとコピーライターであり、
コピーに関しては、めちゃくちゃ真摯で、
世の中に対するユニークかつやさしい視点を持った方です。
(のちほどコピラで検索してみてください)
発言の95%くらいが冗談のような口調ながら、
悩みごとやグチには、まさにありがたいお説教を唱えてくれる方です。
なんというか、「癒し系」。
まさに昨年末、すべてがイヤになり、やさぐれそうだった時も、
「……まあ、こういうあつれき、ストレスを受けながら、
生きるとは何を大切にすることか、だんだん身にしみて
わからせられるのだと思います。」
そんな穏やかな言葉で傷んだ心を癒していただきました。
いまは広告業界を卒業し、港ヨコハマから、
違うアプローチで世の中にメッセージを発信しようとされているご様子。
早くそのメッセージにふれてみたいと思う昨今です。
というわけで、来週は2回目の掟やぶり。(中島信也さん以来かな)
本日ご紹介した、僕の一番年上の親友、高橋一起さんの登場です。
現在はTCCを退会されてますが、TCC41年の歴史の中でも
唯一新人賞2回の金字塔を打ち立た奇才ですし、
久しぶりに高橋さんの言葉にふれたい人も多いのでは…。
では、5日間、ありがとうございました。
(次に書くとしたら14年後くらいでしょうか?)
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