ぞうの花子さんとにわか動物愛護おばさん
師僧?である高橋一起さんから、
「来週あたりTCCのリレーコラムを書くことになるでしょう」と予言され、
ちょっとびくびくしていたのですがやはり予言通りになり、
逃げも隠れもできずに書くことになった丸山です。
フリーランスのコピーライターになり4年ほど立ちました。
長かった会社勤めを終えて思ったこと。それは、これまでの私は
「会社生活者」だったんだなあということ。
現在、仕事を続けながら「暮らしの生活者」として生活を楽しんでいるので
そのへんのことを書いていきます。
「ぞうの花子さんとにわか動物愛護おばさん」の巻き
私がフリーのコピーライターとして自宅で仕事をすると決め、
そのことを夫に伝えるとなんだかうれしそう。なぜかと聞くと、
別に私が家にいることがうれしいのではなく、
これで犬を飼える環境になるというのがうれしいという。
それまでは、お互い帰宅時間が遅いのであきらめていたとのこと。
初耳である。もちろん、めんどくさいのが大嫌いな私は猛反対したが、
子犬を見せられたらもうイチコロだ。
それからいろいろ大変だったけど、現在4歳のメスのダルメシアンとともに
コピーを書く生活がつづいている。
で、犬と暮らすようになって意識が一変したことがある。
それはなんと世界中のすべての動物に対する愛情が湧いてきたこと。
というかすべての動物は、うちの犬の親戚なんだから
大切にしなくちゃというべきか。
大げさだけどこれが大まじめなのだから困ったものである。
我ながら、とてつもなく頭が痛くなる。
ハリウッド女優なんかが動物愛護を唱えているのを見て、
「ケッ」とか毒づいていた私がである。
今じゃ、鳥インフルエンザで大量に殺されるひよこをニュースで見ては、
「人間だったら1人ずつちゃんと検査してもらって、感染していなければ助かるのに。
元気な子もまとめて殺すなんてひどすぎるぞ!」とか。
のら犬が残飯をあさり、追い払われながらも必死で生きている姿をTVで見ては
「けなげだなあ」としみじみしたり。
なんかにわか動物愛護おばさんになってしまった。
そんななかで、ぞうの花子さんに会ったのは2年ほど前。
仕事で吉祥寺の街を紹介するコラムを書くことになり、井の頭公園を散策していた。
確か動物園があったよなあと、一角にある小さくて地味な動物園を訪ねぽつぽつと歩いた。
樹木が多くて、空は青空。気持ちいいなあとなごんでいると、
突然、虚ろな目をして、隅っこの壁を片足でぶらぶらと蹴り続けているぞうが見えた。
もうかなり年を取っていて、いつもコンクリートの壁を蹴っているらしい。
痴ほうの症状にも見える。
看板を読むと、戦後初めて来日したアジアゾウで「花子さん」と呼ばれているという。
環境の違う場所でたった一匹、日本の、東京の、吉祥寺の片隅で生き続けてきた花子さん。
なんか痛々しくて悲しくて、取材用のカメラを向けることができず、
そっとバッグにしまってしまったのを憶えている。
昔の動物園は、だいたいコンクリートの住居で、動物は檻に閉じ込められている感じで、
花子さんがいる環境と似たり寄ったりだった。
でも、このごろの動物園はなるべくもとの自然環境に近くしようと努力しているらしい。
このまえ行った上野動物園では、ゴリラやライオンなど大型の動物が、
たくさんの木や小さな山や谷のある大地で群れをつくり、のびのびと暮らしている姿を見た。私ははじめてだったけど、ご一緒した方は上野動物園を10年ぶりに訪れたらしく
「昔は動物園にいる動物たちは可哀想だと思っていたんだけど、
この環境ならずいぶん快適でしょうね」とよろこんでいた。
幸か不幸かは本人にしか分からないが、長生きを続けている花子さん。
今日もずっとあの壁に向かって空を蹴り続けているんだろうか。
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