肉の傷と心の傷の話し
実は私の左腕には、傷があるんです。
5歳の時に交通事故にあってできた、15センチくらいあるでっかい傷。
昔の、それも田舎の手術だから、それはもう思いっきり大胆なヤツが
でーんとある。小さいころは、ゲジゲジとか言われてよくケンカしてたっけ。
でも、別に恥ずかしくも何ともなかったので、夏になればノースリーブでも
何でも着てた。逆に、その傷を見た人が、見て見ぬふりをするのが
何か悪いことしたみたいでちょっとツラかったかなあ。
しかし、東京にやってきて働き始めたある日。
先輩のコピーライターがまじまじと私の腕を見て
「お前さあ、その傷カッコイイね」と言った時は驚いた。
つまり傷があることにより、なんだか私と言う人物に、憂いと言うか
カゲのようなものが感じられてカッコイイと言うのだ。目からウロコである。
そうかあ、楽観主義で脳天気な私のキャラに足りなかったもの、
それはカゲだったんだなあと。ちょっと暗い部分があった方が、
人間にも深みがでるというもんらしいと、そこではじめて気づいた。
で、いまはその傷を自分のいちばんのチャームポイントだと位置づけ、
聞かれもしないのに事故の話しとかしてシャツの袖をめくってしまうのは、
とてもよくないっすよね。
あ、心の傷の話しは…、こんなとこでするわけないじゃないですか。では。
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