リレーコラムについて

第三話:拳の道から探る広告仕事作法

髙澤峰之

第一話、第二話とずいぶん意気込んで書いてしまって、
いささか息切れ気味です。今日は、少し短めにします。

ラテンと並んで、私が趣味にしているものに、
ある武道があります。
流派でいうと少林寺拳法。
もうダラダラ続けて十余年が経ちます。
この3ヶ月ほどは、仕事で徹夜が続いたりしていた都合上、
ずいぶん道場稽古をさぼってしまっています。
自分のカラダ、とくに腹部と背筋部がなまってきているのが、
冗談でなくわかり、嫌です。
なんとか元のベストな自分に戻りたいものだと思っています。

そんな泣き言は、まあ置いといて。今日のコラムの本題です。
この武道で使われる言葉で「先(せん)」という言葉があります。
「先(せん)で動く」なんて使ったりしますが、
これは、敵と相対しているとき、相手が技をかけようとした
動きを「いち早く予知」して勝ちをとることを言います。
武道の世界では、なかなか重要な“能力”と
されているものですが、私の広告での仕事をしていくうえでも、
この「先」の感覚は大事だなと感じています。
といっても広告仕事界では
「相手が技をかけて攻撃してくる場」は無いので、
これは仕事の「オリエンテーション」だとか、ひとつひとつの
「打ち合わせ」ということに置き換えて考えます。

仲間内での打ち合わせでも、ほんとにお気軽に望んでしまうと
相手からアイデアの技が次々繰り出されて、自分はただそれを
受けるだけになってしまいます。その、相手からのアイデアは
ほんとうに良いアイデアであることも決して少なくないので
仕事としてはそれで固めていくことでいいわけですが、でも、
自分で仕事をしている感は薄くなります。そのまま黙っていると
気がついたら、自分はそこに居なくていい人になっていた、
などという場合もあります。これは危険です。
相手から技(アイデア)が出てきたら、それを受けて、あるいは
それをさらによくする技を出していく。もっと言えば、
相手よりも先に鋭い技を出していくのが望ましい。
おお! 日々の打ち合わせも、やはり先手先手の勝負の場
なんじゃないか。というのが、私が感じていることです。

とはいいつつも。
正直に言って、日々そうピリピリと電流の流れるような
“先手先手”の毎日を送っている私ではありません。
ラテン・カリブ世界でしばしば言われる
(かつ、向こうの人は本当にそうやって生きている)ことに

   「明日できることは、今日やるな」

という悪魔のように魅惑的な言葉もあり、これと冒頭の
「先」の考え方の狭間で日々悩み(嘘)生きているのが
私の正体であります。

明日考えればいいことは、今日考えなくてもいい。
でも、さて明日のコラムは何を書こうか、
と考えてしまう私も貧乏性なものです。

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