ライカのこと。
柏木さんからの依頼は断れません。
リクルートの三神と申します。
住宅の部署で個別企業のブランディングなどやっています。
しばし、おつきあいください。
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東京にきたのは、いまから13年前。
まだ、バブルの残り香がある頃で、飲んで帰りが遅くなっても、
タクシーがなかなか止まってくれないご時世だった。
新婚早々で、住んだところが都心も都心、中央区の勝どき橋のたもとだった。
社宅だったから、そんな場所に住めたのだけれど、
忘れもしない駐車場代が月に4万5000円。
払えるはずもなく、泣く泣くクルマを手放した。
だから、足はもっぱらバスだった。
勝どき橋南詰から乗って、築地をすぎたら、すぐに銀座である。
バス停を降りると、目の前にカメラ屋さんがある。
なんども通りがかるうちに、不思議な光景に気がついた。
おじさんたちがガラスのショーウインドウに、ビッタリへばりついているのだ。
何を見ているんだろう。
それは古いカメラたちだった。
ふーん。そんなにめずらしいものなのかな。
病気というものは、多くの場合、いつのまにか伝染し、知らぬうちに拡大していく。
「ライカ病」というのも同じだった。
最初は、「赤エルマー?なにそれ?」って感じだったものが、
「しかもダイヤマーク入りじゃん、これは即買いだぜ」に変わっていくのも、時間の問題だった。
感動の1台目購入から、知らぬ間に4台に増殖していった。
ライカ探しのワールドツアーにも出かけた。
もっとも、世界でいちばんライカが集まっているのは、
なんと銀座だったのだが。
物欲が強いせいか、今後もモノ買う話ばっかりになりそうだが、
もちろんライカは実益も兼ねていた。
レンズのボケ味がどうのとか、仕事にもちゃんとつながったと声を大にして書いておこうと思う。
でも、いちばんシズル感があるのは、
あの銀色の重量に満ちた塊に、
人間の創造性が凝縮した工業製品の妙。
イタリックのロゴあたりを布キレで磨いているだけで、
カイシャのストレスがすっと消えていった。
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