リレーコラムについて

長い言い訳。

星野俊夫

40歳も過ぎると、世の中に
コワいという存在が、あまりなくなりましたが、
ある眼差しに、腰を抜かしそうになったことがあります。

場所は、ボストン。
Museum of Fine Arts,Bostnの二階にその眼差しはありました。

オフホワイトの壁面と、8メートル近い天井の高さの廊下など
明るく開放的な美術館ではありますが
ある一角だけ、太い木の格子に囲まれた
アジアンビンテージな異空間があります。

ひたすら、暗い。

オフホワイトに慣れた目には、ほとんど何も見えません。
しかし。

時間が立つと、目が慣れてくる。
そしてようやく慣れた目に飛び込んでくるのが、その男。

私の身長が1メートル80。そのさらに上1メートルから
見下ろすパンチパーマの真っ黒な男。
不動明王(http://www.mfa.org/artemis/fullrecord.asp?oid=8368&did=300)でした。
仏像趣味なんて、全くなかったのですが
闇の中、不動明王の眼差しに腰が抜けそうになる。
さらに横。
菩薩や観音が静かに見つめていた。

静寂。
そして射抜く眼差し。

勝ち組、負け組なんて言葉すらなくて
政権が変われば命までがゼロリセットされてしまう時代。
平安末期の激動と一言で片付けるにはあまりにも厳しい時代に
勝った武将は、自らを見失わないために
さらに厳しく戒める眼差しや、静かに見つめる眼差しが必要だったのではないか。
じゃないと、自分がわからなくなってしまう。
そのための闇が、必要だったのかもしれない。

そうだよなぁ。
Bostonの美術館で、ひとり涙をこらえる星野俊夫。

だからさ、
原稿を昨日中に見なかったとか、
大事なビデオ巻き込んじゃったとか、
社長が発表するパワーポイント間違えたとか、
この前個人輸入したギブソンがちょっと高かったとか。
そんな小さいこと、気にしない。気にしない。
な、小さい小さい。

(だからゴメン、みんな、許して)

NO
年月日
名前
5719 2024.07.12 吉兼啓介 短くても大丈夫
5718 2024.07.11 吉兼啓介 オールド・シネマ・パラダイス
5717 2024.07.10 吉兼啓介 チーウン・タイシー
5716 2024.07.09 吉兼啓介 吉兼睦子は静かに暮らしたい
5715 2024.07.08 吉兼啓介 いや、キャビンだよ!
  • 年  月から   年  月まで