リレーコラムについて

すねている

野﨑賢一

「えー、これは、全然似てないですよね(苦笑)」
僕は、心の動揺を消すかのように、
ホワイトボードに書かれたその絵を、
無意識に消していた。

前回リレーコラムを書いた、
5年前の2014年。
汐留のアドミュージアムで行われる、
TCC展の中の行動展示という企画。

新人賞受賞者を中心に、
一日、会場に本人が展示されるという内容。
TCC新人賞をこじらせていたため、
もし、新人賞を獲ったら、
というシミュレーションだけはすべてにおいて万全だった。
当然、この行動展示も内心ワクワクしていた。

その日は、TCC賞受賞者で、
コピーライターとして名を馳せている、
藤本宗将さんが午前で、
新人賞の僕が午後の二人の展示。

「本日の行動展示」
会場の展示スペースの後ろにあるホワイトボードには、
藤本さんと僕の名前、そして、それぞれの似顔絵が。
どこからどう見ても、藤本さんとわかる似顔絵。
当時、そんなに面識がなかったが、
さすが、藤本さんの顔は色んなところで写真で見て知っている。
それに対し、
おでこや目尻に深いシワが多めの、優しい笑顔の
でも、誰だよこのおじさん、
という似ても似つかない僕の似顔絵が。

冒頭の会話に戻る。
案内してくれたアドミュージアムの女性は、
瞬時にその空気を読み、気を遣って、
「これ、館長が描いてるんですけど、
多分、適当にネット上で写真探して描いたんじゃないですか、もう」
と。

いやいや、そんなわけないだろう。

受賞者の写真は撮っているし、
だとしても、本人かどうかちょっと調べれば分かるだろう。
その優しい気遣いも、虚しくなる。

確かに、33歳だからシワもある、
表情によっては、おでこにシワができたりする。
(猿のおでこのようなシワ)
それにしても似てなさすぎる。

楽しみの分、カウンターパンチで、
相当なダメージを受け、
笑いに変えることすらできず、
消して、無難な絵に描き直して、
行動展示をこなした。

完全にすねた。

そして、すねたまま仕事をし、
帰宅して、深夜、布団に入り、
一日を振り返って眠りに落ちようとしたとき。
閃光のように頭に蘇った女性の言葉。
「ネットで検索して、、、」
その時はまさかと思ったが、
「野崎賢一」で画像検索してみると、

寝室の、布団の暗闇に浮かびあがる、
消してしまったあの似顔絵と、
どこからどう見てもそっくりの、
男性の写真が!
(2019.5.26現在、ありました)

ページに移行すると、
静岡県で茶畑を営まれている同姓同名の
野崎賢一さん、とのこと。

めっちゃ似てる。

館長さん、似顔絵うますぎ!

でも、調べなさすぎ!

僕がクリエーティブに転局した翌年、
近くの部署に新入社員として配属され、
最初の打ち合わせからその規格外の企画力を発揮、
佐藤舞葉から一年遅れての受賞。

新人賞が決まって、
師匠の篠原さんからお祝いの電話があったときは、
電話越しに泣いた。

篠原さんと舞葉とは、
多くの仕事をさせてもらった。

その翌年、まさかの展開。
三太郎で篠原さんと舞葉とTCC賞を受賞した。
(篠原さんの受賞コメントにある通り、
三人が代表して受賞させてもらっている)
三人で、年鑑の写真を撮りに行った。

受賞者の写真がメールで送られてきたとき、
篠原さんが嬉しそうに、
「いい写真だなあ。
みんなのおかげだけど、
三人で写真撮れてよかったなあ」
という言葉が忘れられない。
器がでかい。
一人で受賞することだってできた。
続けて、
「いずれ、それぞれが城を持つようになるからなあ」
と言った。
その時は、聞き流していた。
そんなことないだろう、
もしくはずっと先のことだろう、
と思っていた。

昨年、篠原さんは、篠原誠事務所を設立。
今年、舞葉は、

3日目のカレー
店長
佐藤舞葉

という名刺をつくって、
会社を辞めた。

僕は、今、
一人取り残されたようで、
すねている。

すねつつ、
二人に置いて行かれないようにしないとな、
と思っている。
仕事で見せよう、
と思って仕事している。

すねているので、
これまで毎日のように顔を合わせていた舞葉に、
気安く、元気?とか、連絡しないようにしていたのだけど、
ものすごく気になっているので、
バトンは佐藤舞葉に渡します。

気になっている人、必読!


友和、バトンありがとう!
舞葉、楽しみに読ませてもらいます!
読んでくださった方、ありがとうございました!

思い出に残る、一週間になりました。
ではまた!

野﨑 賢一
クリエーティブディレクター
CMプランナー/コピーライター
電通
k.nozaki@dentsu.co.jp
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