リレーコラムについて

下妻物語(2)

権八成裕

小さい頃からアイドルやらされてネジレまくったクールネス
にゆきついた深田恭子。
小さい頃からモデルとしてチヤホヤされてパンクかなんか
半端なイキがり方してる土屋アンナ。
いや、彼女たちの実人生なんか、もちろん映画では語られないし、
全然間違ってるかもしれない。
だけど、役柄なのに、役を越えてスクリーンから乗り出してくる人間性。超一級のエンターテインメントなのに、フカキョンとアンナという女の子のドキュメントでも見てるかのような生々しさ、強度、そして、煌めき。
そんな演出、誰にも出来ない。

勿論、中島哲也は、そんなこと、意図してるわけではないかもしれない。
だけれども、そんな、全く違う人生を歩いて来た女の子二人と、
そこからさらに100万光年離れた「広告」という、表現を志す人間にとってはあまりにも移り気で残酷なフィールドで、常に映像表現探求の特攻隊長として転がるように変化し続けてきた中島哲也という才能の、「作家性」ではなく、むしろ人間としての「性(さが)」。
この三者が、あまりにも高次元で、結実しまくって爆発して、
映像の奇跡をフィルムに焼きつけてしまったんだ。

映像には、奇跡が起きる瞬間がある。
それは、きっと、出てるのも撮ってるのも、生身の人間だからだ。
じゃ、生身の人間ってなんなのか。
そのことの本質を、この映画は教えてくれる。
いや、教えてくれるんじゃなくって、
ダイレクトに、豪速球で、「ここ」に来る。
ここってのは、胸だよ!心臓じゃなくって、ハートだよ!
そいつはもう、自分のその目で、耳で、全細胞で確かめるしか無い。
見終わったら、間違いなく桃子とイチゴ、
いや、フカキョンとアンナさえも好きになる。
そして、とてつもない幸福感で満たされる。
それは、二人のその先に見える
「人間」という愛おしい生き物のファンになれたことを、
僕らの心が祝福しているからなのかもしれない。
大勝利だと思う。
おめでとう。そしてありがとう、哲也さん!!

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