リレーコラムについて

夏時

齊藤美和子

人混みが嫌いなので、
満員電車もバーゲンも、行列のできるラーメン屋も敬遠しますが、
花火は混み合った会場で見るのが好きです。
エアコンの効いた部屋から眺める小さな毬みたいな花火も、
建物の隙間にレースの切れ端のように偶然見える花火も、
それなりに味わい深いですが、
迫りくる巨大な花火を人いきれの中で見上げるのが、やっぱり最高です。
花火大会の会場には、普段全く別の生活をしている大勢の人たちが集まります。
光、音、振動、漂う火薬の匂い、昼間の暑さの残るぬるい空気…
みんなが五感を共有し、揃って興奮しながら夜空を仰ぐ。
そしてそれぞれ別々のことを想う。
恋人同士や友達グループや家族連れ、
これから毎年、一緒に花火を見ることになる人たちもいるかもしれないし、
明日失恋する人もいるかもしれない。
たくさんの人の期待や歓声や感動が渾然一体となって、
会場のテンションは高まり、
花火が燃え尽きてもなお、長く余韻が残る。
駅までの道を歩く人たちの顔がまだ少し昂揚している。
花火には言葉もストーリーもないのに、
それぞれの夏の物語ができあがっている。
同じ瞬間に、同じように夜空を見上げる人々の心境に、
想いを馳せるのが好きです。
その中には、去年の私もいたりします。
去年と同じ場所で夜空を見上げながら、
毎年変わってゆく自分を感じます。
そんな感覚が、花火を一層印象的にするのかもしれません。
また今年も夜空に花の開く季節がやってきます。

齊藤美和子の過去のコラム一覧

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1215 2004.07.16
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1213 2004.07.14 夏時
1212 2004.07.13 家事
NO
年月日
名前
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