リレーコラムについて

あの頃(パレスビル9階)

蛭田瑞穂

大手町のオフィスの窓から外を眺めると、
UFJ銀行の本社の壁に、金色に輝くロゴマークが見える。
そのうち、あれがなくなってしまうんだなあと思うと
自然と感傷的な気持ちになってしまう。
ということはまったくない。

万物は変化する。間違いなく確実に。

サン・アドのオフィスが、
パレスビルの9階から6階へと移る。
拡張に伴う移転だ。
来月、9月13日から。

僕は1995年にサン・アドに入社したから、
9年間を今のオフィスで過ごした。

ここでの思い出はたくさんあるが、
昼間の思い出より、夜の思い出の方が圧倒的に多い。

深夜にたったひとりでコピーを書いたこと。
それは数多くあるから思い出にならない。

酒だ。

もし僕の今までの人生において、
パレスビルの9階というものがなかったら、
今のようには酒を飲んでいなかったはずだ。
これだけは間違いなく言える。

25歳から30歳にかけて、
毎日のようにオフィスで酒を飲んでいた時期があった。
コピーを書きながらビールやチューハイをちびちび。
というようなものではなく、
紙コップにウイスキーをなみなみと注がれてそれをロックで。
というような飲み方だった。

一晩で何杯飲まされたかわからない。

というのは途中まで飲むとまた注がれるから、
杯という単位で数えることができない。

酔っぱらって、音楽が大音響でかかり、
頭がぐるぐるとまわる。
そのうち朝になって会社の人の家に泊まりに行く。

それまでまったくといっていいほど、
酒が飲めなかった僕が、そのような日々を経て、
今は家にウイスキー、ワイン、ビール、焼酎が常備してある。

パレスビル9階の思い出。
万物は変化する。間違いなく確実に。

UFJ銀行のロゴマークが消えても感傷的にならないのは、
それが自分にとってまったく関係のないことだからだ。
だが、自分に関係のあることには多少感傷的になる。

来週は東秀紀さんです。
コピーも酒場での雰囲気も好きです。
東さん、よろしくお願いします。

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