そのクリエイティブは、誰の心を動かしたか。
武藤多恵
私は現代アートが好きで、今年は30〜40くらいの
作品展を見ました。美術館やギャラリーに行くと
作品はもちろん、その作家がどんな人の心を動かして
いるのかもつい、見てしまいます。今日はそんなことも含め、
最近見た美術展の中で印象に残っているものを書きます。
1.来場者の層がとても幅広かった「YES オノ・ヨーコ展」
オノさんの活動の幅広さを反映してのことと思うのですが、
子どもから大人まで多数の来場者で大盛況でした。
途中、ディープな作品群の前では「どんな顔をして見たら
いいのかしら」と困惑気味のマダムがちらほら・・・。
でもクリエイティブって、わかりやすいものばかりじゃ、
つまらないですからね。そんな私がドキドキしてしまったのが、
「NYのオノさんから、たまに電話がかかってくる電話」の展示。
かかってこないとは分かっていても、つい・・・(苦笑)。
2.2つの層の来場者が一目で判別できた「夢見るタカラヅカ展」
これは今も、初台のオペラシティでやっています。宝塚歌劇団
そのものを紹介する展示と、宝塚をテーマにした
アート作品の両方が展示されているんですが、
来場者を見ているとどちらがお目当てかすぐ、分かります。
ヅカファンの方々はマナーがよく、森村泰昌さんや
やなぎみわさんの作品もちゃんと見ているのですが、
断然、宝塚のステージのビデオの前で「うっとり」
している時間が長いんです。この「宝塚って『うっとり』
見るものなんだなあ」という気づきが、
劇場に行ったことのない私にとって、とても新鮮でした。
3. 本当に好きそうな人が、じっくり見ていた「石原友明展『i』」
7月に西宮市の美術館に行って、見ました。信頼する
アートプロデューサーの山口裕美さんが「今すぐ見に行くべき!」と
力説されていたからです。ここでは私を含め、1人でやって来て
ゆっくり、じっくり見ている人が多いなあ、という印象でした。
実は、この作品展が印象に残っている理由は他にもあります。
石原さんは、非常に文章力のあるアーティストだったのです。
作品の中に「美術館で、盲人と、透明人間がであったと、せよ」
という書き下ろしストーリーがあったのですが、
長いけれど飽きさせず、次を読みたくなる展開でした。
言葉を紡いで人とコミュニケーションする楽しさを、
美術館という「意外な場所」で体感できたことが嬉しかったです。
あのストーリー、フォトブックになって出版されない
かなあ。本当によかったです。
会ったことはない誰かの作品に、心動かされる瞬間が、
私は好きです。分野は違うけれど、私が広告の仕事を
している理由も、ここにあります。
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