聞き耳
生来というか、後天的なものか、人の話を立ち聞きせずにはいられない。
もちろん、夜道を歩いていて、雨戸の閉めてない部屋などを見かけたら、
かならず中をのぞいてみたいし、夕方、細い路地などを歩くときに、
ふと、お魚を焼くニオイがしたり、お風呂を沸かすニオイがしたりすると、
いったい、どんな人がどんなふうに暮らしているのかと耳をそばだてずにはいられない。
喫茶店などで、あまりにも集中して、隣のカップルの話を聞いていると、
一緒にいる友人に怒られたりもする。それでも、懲りずに耳を傾け、あまりにもハナシが面白いので、念のためそれを報告したりすると、さらに怒られる。
悪趣味だな、と思うが、これがどうしてやめられない。
昔、雑誌で、かのユーミンが同様の手法から作詞のヒントを得た、というエピソードを知ってからは、さらに堂々と(といってもバレない程度に)実行できるようになった。
つい一昨日も、家でボンヤリしながら、隣家の頼んだ植木屋夫妻の会話を聞くともなし聞いていた。
すると程なく、植木屋の奥さんがコンビニにジュースを買いにでかけていった。
ところが、ナントその間隙をぬってダンナに女性からTELが・・・!。
どうやら、月曜に同伴してほしいと、頼まれているようだ。むむむ。
少しなまりのある声からして、60はとっく過ぎているだろう植木屋さん。
ほぼ孫に接するように
「じゃあ、仕事が終わったらドウハンしてあげっから。うんうん」と、
どこか同情めいた口調。
おやおや。相手のヒトは、あまり売れっ子じゃないのかも・・・。なんて想像するうち、
脳裏に、古びたミラーボールと擦り切れたソファーのおかれた場末の店が、浮かんでは消えた。
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