僕の苦手なこと?
企画もコピーも、全く得意ではありませんが、なによりも苦手なのが、ネーミング。
入社して始めての仕事が某歯磨き粉のネーミングで、そのとき立ち直れないほどに
ケナされた過去がトラウマになっているのか、ほとほと苦手です。
数え切れない商品のネーミングに関わってきて、通った経験ゼロ。
近頃では、苦手なことを無理やりやる時間があったら、
得意なことを伸ばす時間に使った方がいいという自分勝手な正論にもとづき、
ネーミングの仕事には一切近づかないようにしていました。
ところが、ある日突然、こればっかしは逃げるわけにはいかない
仕事が舞いこんできてしまいました。
実は、子供ができまして。
これは、やるしかないでしょう。
とびきりのネーミングで、世の中にデビューさせてあげるのが、
コピーライターの父親ってもんでしょう。
何年かぶりの、ネーミング千本ノックが始まりました。
クライアント(妻)の要求は、「女の子らしく愛らしく、古風でも今風でもなく、
おばあちゃんになってもかわいらしい名前。」……望むところよ。
愛らしい、じゃあずばり「松村愛」。AV女優じゃないんだから→却下
女の子といえばコレだろ「松村リカ」。バカっぽくない?→却下
カタカナがいけないんすかねえ「松村理香」。漢字にすりゃあいいってもんじゃない→却下
芸能人で攻めてみました「松村聖子」。ぶりっ子かよ→却下
インターナショナルな感じで「松村カレン」。そんな発注はしてません→却下
予想通り、手厳しいクライアント(妻)。全ての提案、ことごとく秒殺。
真面目に千案に達しようかというころ、疲れ果てた僕は、
クリエイターとして言ってはいけないひとことを口にしました。
「じゃあ、一体どんなのがいいんですか」
ニヤリと笑うクライアント(妻)。
「たとえば……ひらがなで“さくら”とか」
さ・く・ら?……むう。なるほど。
「ピンクが似合いそうだし、ずっと古くならないし、それに予定日4月だし」
むう。コンセプトにぴったり、さらにプラスαの要素……
心が揺れつつ、クライアントの案にはひとまずイチャモンをつけたくなる
クリエイターの習性で、言い返します。
「ひらがらもいいけど、漢字の方が逆に新鮮じゃないですか?」
「松村桜? 日本酒じゃないんだから」
確かに。今にも渡哲也が「呑むことよ」って出てきそうだ。
「ちょっとみんなに聞いてみよっか」
さっそく自分の案を、消費者調査にかけるクライアント(妻)。
じじ、ばば、姉、弟、親戚一同、友人一同……サンプル数20で、
「非常に良い」「良い」あわせて19。
屈辱の白旗をあげるクリエイター(夫)。……まいりました、「さくら」でいきましょう…
いや、いいんですよ、ほんとに。「松村さくら」。かわいいし、モテそうだし、ピンクだし。
でもね、何が悔しいって、自分で思いつけなかったこと、これが悔しい。
一生に一度か二度の大仕事だったわけですよ、それでクライアントに負けるか普通。
勝負弱いなあネーミングの仕事避けてた罰かなあ。
なんで思いつかなかったかなあ悔しいなあ……
教訓。クリエイターの仕事は、どこでどう役に立つか分からない。
日頃から、苦手な仕事ほど、手を抜かずにがんばりましょう。
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