ふっきれた男。
ふっきれた。39歳にして。やっと。
きっかけは、村松だ。いや、松村のひとことだった。
「高田さんって、自分で思ってるより、ぜんぜん、単純ですよ。
ってゆーか、みんな高田さんより、ずっとずっと悩んだり考えてますよ」
はいはい、そーですか。と、気軽に受け入れられる発言ではなかった。
それまで僕は、自分のことを、けっこう複雑な男だと思っていたから。
えらそうに見えても、気配り上手とか。
せこそうに見えても、太っ腹とか。
正直そうに見えても、狡猾とか。その見えても以下が、ない。らしい。
つまり、えらそうで、せこくて、正直とか、ね。うわ、単純。
別の後輩にも同じこと言われた。高田さんのつくるものって男っぽいですよね、とも。
だから、開き直ることにした。どうせ、わかりやすい男なら、
とことんストレートな表現をつくってやれ、と。
★
そのひとつが、最近、つくったCM。
かっこいいのが作りたかった。男がしびれるよーなやつ。
昔のウイスキーとか、男性化粧品とか、世界観としてイカシタやつ。
自分がかっこいいと思った、あの手触りと残像を、
今の時代に、自分というフィルターを通して再現してみたかった。
石毛監督には
「MG5みたいなカッコよさで、あの、いかした頃の感じで」とリクエストして、
鈴木慶一さんには
「JBの60年代の未発表曲、発見!みたいなやつ」とお願いして。
歌詞もストレートなのを書いた。だって「進みつづける男」だもんね。
強い男がいて、強い音楽があって、強いメッセージがある。
とうとう自分が見たいという欲望でCMをつくってしまった。
世の中はカンヌを向いているというのに、僕はいったいどこを向いているんだろう。
「俺が感動しないCMは、誰も感動しない!」みたいな、わがままっぷり。
僕は満足していますが、みなさんはどうでしょう。「ヤクルト400」のCM。
渡辺謙さんが、雨に打たれて吼えてます。
★
というわけで、今週、コラムを担当することになった、高田伸敏です。
松村とは同じ会社の東急エージェンシーにいます。
ちょい、ひげ生えてます。眼鏡、ちょい色入ってます。
性格、ちょいエロ入ってます。
なんでも「ちょい」を付けるとモテるらしいと「LEON」に書いてました。
愛読してます。嘘です。
1週間、よろしくお願いします。ふっきれていきます。
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