リレーコラムについて

どんな男の心にも、本宮ひろしは住んでいる。

高田伸敏

喧嘩、喧嘩、喧嘩。
ことあるごとに、殴り合いが始まる。そんな喧嘩ばかりの会社だった。
26歳から30歳まで、その会社にはいた。喧嘩の回数は、覚えていない。
だって、酔えばいつも、だったから。
先輩たちは、わざわざ喧嘩したくて、飲みに行ってるのではないか、
と思えるほどだった。
新年会、忘年会、新人歓迎会、送別会、コピーライターの会、打ち上げ、飲み会。
会社のある銀座界隈では、出禁になった店が数件あった。
なんせ、みんな、背が高く、ガタイのいいヤツばっかだった。
180cm以上がほとんど、178cmの僕でさえ、チビ扱いだ。
ヤンキーあがりと、ラグビーあがりの先輩がその中心にいた。
この人たちの心のなかには、
きっと本宮ひろし(今なら高橋ヒロシか)が住んでいるんだろうなあ、
と思うことも、しばしばあった。僕も、そのひとりではあったが。

ある日のこと。その時ばかりは事情が違っていた。
店内での集団乱闘。普通の会社員だと思っていた相手は、
ちょっとヤバイ系だった。
いつもの喧嘩だと思っていたが、
みんな、普段よりエキサイトしていたのかもしれない。
翌日、どこで調べたのか、
訴えるという電話が会社の先輩プロデューサーに来た。
そこからの動きが早かった、すべての関係者は診断書を集め、
プロデューサーは弁護士に相談していた。
結果、向こうが引くことで決着がついたが、
その話は、会社の役員たちにまで届いていた。
中心のふたりが役員たちに呼ばれ、僕たちはその動向を見守った。
「まいった。めちゃめちゃ説教された」
出てくるなり、へこんでいるふたりがいた。
そりゃそうだろう、会社に迷惑がかかるところなんだし。
「違うよ。喧嘩のやり方で説教された。
中途半端な喧嘩してるからそうなるんだ。
訴えられないくらいボコボコにするんだよ。だってさ」
意外なところにも、本宮ひろしを飼っている男たちが、いた。

こうして喧嘩ブームは、いつのまにか、なりをひそめ、
別のブームがやってくることとなる。

裸、裸、裸。
ことあるごとにカラオケBOXで10人以上の集団が脱ぐようになったのは、
その半年後だった。そして、その中心に、僕は、いた。、

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